第3章66話:ボス
しかし、俺にはサイコキネシスがある。
ジギモスなど相手にはならない。
「グガァアアアアアッ!!」
俺の存在を視認したジギモスが大声で叫ぶ。
その咆哮は大気を震わせ、迷宮を震動させる。
俺は鼓膜が破られないように、耳をサイコキネシスで保護する。
咆哮が終わったあと、ジギモスが魔力をたわめた。
練り上げられる魔力は凄まじいものがある。
ジギモスの周囲に巨大な氷柱が現れる。
あの氷柱こそ、ジギモスの固有スキル――――【氷柱発射】である。
発射されても面倒なので、その前に俺は告げた。
「爆ぜろ」
その言葉とともに、サイコキネシスでジギモスの体内の空間を膨張させた。
「!?」
ジギモスが目を見開く。
次の瞬間。
ジギモスの胴体が内部から爆散して、砕け散った。
悲鳴も上げる間もない即死である。
血と臓物と骨と肉片が、周囲にまき散らされた。
ジギモスの死とともに氷柱も砕け散る。
二つの頭部が床に転がった。
また、ジギモスの魔石も転がっている。
巨大な紫色の魔石であり、1メートルぐらいのサイズがある。
(頭部と魔石は貰っておくか)
どちらも貴重なレア素材である。
何かの役に立つかもしれないので、アイテムバッグへ放り込んでおく。
「さて……」
俺は視線を、ボス部屋の奥へと向ける。
部屋の奥には扉があった。
その扉を開けると、そこには台座があり、宝箱が安置されている。
俺は宝箱を開ける。
入っていたのは大鎌である。
柄はうっすらと青みがかった黒色。
刃は氷のような水色のテイストが乗った銀刃。
――――【霊氷の大鎌 レキャルク・サイス】。
氷属性を持ち、物理が効きにくい霊体モンスターにも斬撃を浴びせることができる大鎌だ。
武器に【氷柱発射】のスキルもついており、ジギモスがやっていたように、複数の氷柱を発生させ、発射することができる。
強力な武器だ。
しかし……
お目当ての宝物ではない。
俺が求めているモノは、ここにはない。
実は、コルデリオダンジョンでは、ボスを倒したあとに隠し部屋が出現する。
普通気づかないので、攻略サイトなどを見ないと見落としてしまうような要素だが……
そちらが本命である。
というわけで俺は宝部屋を立ち去る。
ボス部屋を抜けて、迷宮の通路へと戻った。




