第3章62話-2:打ち合い
サイコキネシスは使わず、剣術のみ本気を出すことにする。
「ふっ!」
木剣を振るう。
自分がユーデルハイト家で、英才教育として学んできた剣術を、上手く組み合わせてアレクシアに叩きつける。
「……」
そしてアレクシアは、当たり前のように、難なく対処する。
アレクシアの動きは本当に効率が良い。
間合いの取り方。
攻撃速度の緩急。
無駄なくつなぐ剣技。
攻守どちらにも転じられる足さばきと重心。
ひとつひとつに意味がある動きだ。
攻勢だった俺は、アレクシアによる反撃の末に、いつの間にか劣勢に追い込まれる。
(勉強になるな)
美しい剣を振るう者の動きは、手加減されていても参考になる。
学ぶべきエッセンスが秘められているからだ。
結局。
しばらく打ち合った末に、俺の首にアレクシアの木剣が触れた。
勝負アリである。
「参った」
と俺は宣言したあと、告げた。
「有意義な時間だった。短い打ち合いだったが、学びのある仕合だった」
社交辞令ではなく、本心からの言葉だ。
アレクシアが微笑んでから、言った。
「私も、わが国ではあまり見られない剣と仕合えて、楽しかった。貴殿が振るうのは異国の剣だな。ルドラール地方の剣に近いか」
「……まあ、俺の故郷がそのあたりにあるからな」
そのあたりにある……どころか、完全にルドラール出身だ。
――――剣術とは多くの情報を相手に与える。
アレクシアは過去に、ルドラール王国人と打ち合ったことがあるのだろう。
そこから俺の剣がルドラールのものと推測したか。




