第3章61話:村
村にたどりつく。
小さな村だ。
マリコ村という名前らしい。
雑木林と田園が広がっている。
静かで、ゆったりとした雰囲気が伝わってくる。
少し遠くに風車が回っていた。
「のどかな村だな」
と俺は率直な感想を述べた。
自分の心拍数が下がり、精神が落ち着いてくるような……優しい雰囲気の村だ。
「ああ。ここは人口100人ばかりの小さな村で、閑散としているが……平和だ。何より、みんな人柄が良い。私はとても気に入っているよ」
とアレクシアが同意した。
ミリーナの家は、そんなマリコ村の西の端にあった。
家の背後には雑木林が広がっている。
俺たちはミリーナの家に入った。
「……」
家の中には誰もいない。
ミリーナが告げる。
「今からお昼ご飯を作ります。コーヘイさん、少しだけ待ってていただけますか」
「ああ」
と俺は答える。
そのときアレクシアが提案してきた。
「せっかくだし、剣の素振りに付き合わないか?」
「素振りだと?」
「待っているあいだ、暇だろう? 型の確認がてら、打ち合わないか?」
まあ、たしかに暇だ。
俺はうなずいた。
「いいだろう。付き合おう」
「なら、裏庭に出ようか」
アレクシアが告げてから、歩き出す。
俺は後に続いて、玄関を出て、裏庭へとたどりつく。
アレクシアがアイテムバッグから二本の木剣を取り出した。
そのとき俺は、ふと思ったことがあったので、尋ねてみた。
「そういえば、ミリーナの家には誰もいないんだな。両親は出払っているのか」
するとアレクシアがぴくりと眉を反応させる。
少し憂いを帯びた目をして、答えた。
「ミリーナの両親はいない」
「何?」
「兵士だったんだがな。戦争で亡くなった」
……そうか。
もしかすると、アレクシアがミリーナを気にかけているのは、そのことに由来するのかもしれない。
アレクシアはきっと、ミリーナの両親と何らかの縁があったのだろう。
「まだミリーナは幼いだろうに、一人で生きているのか」
俺はぽつりとつぶやくと、アレクシアは言った。
「そうだな。立派な娘だ」
アレクシアは木剣を一つ、俺に投げてきた。
俺はその木剣を受け取る。




