第3章52話:待機
俺は告げる。
「まあ、そうはいってもしばらくは、ここで待機してもらうことになる。俺はリースバーグ神殿国に用があるからな。先にそちらを済ませたい」
「そういえば、おぬしがここに来たのも、神殿国に行くためであったな。いったい、かの国へ何用なのじゃ?」
「欲しいものがあるのだ。それは神殿国でしか手に入らない」
俺は詳しい理由はぼかした。
ちゃんと話そうとすると、俺が神殿国に行くことが、前世の知識に基づいていることも話さなければならない。
さすがにまだ俺が転生者であることを話すのは早い。
そういう身の上話は、もう少し親交を深めてからじっくり語りあったほうがいいだろう。
「そうか。ならば我は、しばらく待機していればいいのじゃな」
「暇つぶしの仕事が欲しいなら、用意してやってもいいが?」
「いいや、構わぬ。静かに時を過ごすことには、慣れているからのう」
ノルドゥーラはフィオリト岩原の支配者として、長きに渡ってこの地に留まっていた。
何もない平原で、日々を送れる程度には、退屈な時間に慣れているのだろう。
刺激のない無為な時間を延々と過ごすのは、俺だったら耐え難いことだな……とひそかに思った。
「では、俺はこのままリースバーグ神殿国へ向かう。また後日会おう」
「ああ。気をつけてな」
とノルドゥーラに見送られ、俺は神殿国への方角へと足を向けるのだった。




