誓いの指輪
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魔獣を討伐したアルフリートが帰ってきた。キサラギ領は王国と一部いうのはすでに形式化し、大陸中で一つの国家と見做されている。
「リディ、行きましょう」
「アルフリートさま、どうしたんです?」
最近アルフリートの瞳はいつも黄金だ。生まれた時は、黄金の瞳だったのだとアルフリートがリディアーヌに教えてくれた。
(金の瞳に変わるのだと思い込んでいたけど、普段の深海の瞳の方が元々の色を押さえ込んでいたのね?)
なんとなく最近のアルフリートはリディアーヌとの距離が近い。今だって、当たり前のように手を握られた。
連れ出された先には、レーヴェレンツ商会の出張所だ。大体のものが揃うので、辺境も辺境なキサラギ領民の生活レベルを上げてくれる、貴重なお店だ。
何故かそこの店長は、レーヴェレンツ家長男のルシアードだ。
『うん、いずれここに領地を賜る予定。本店も移転するから』
ルシアードは、商人特有の何を考えているのか読めない笑顔でそう言っていた。たぶん、そのうち現実になるのだろう。
「お待ちしておりました」
「ああ、用意できたと聞いた」
「いつも、聖女様のお召し物などでお引き立ていただきありがとうございます」
「いつも急な注文に対応してもらい感謝している」
(あのドレスや軽鎧、すぐに用意されてた舞台裏はここにあったのね)
アルフリートは小さな箱の中身を確認しているようだ。
「最高品質です。お気に召していただけると確信しております」
「そうだな、感謝する。では、またあとで来る」
そのまま箱を持ってアルフリートは、リディアーヌの手を引いて店を出た。キサラギ城の景色の素晴らしい場所まで、無言のまま二人は向かう。
(ここ、私が景色のいい場所に連れて行ってと頼んだ時の)
そこは、リディアーヌがアルフリートに思いを告げた二人の特別な場所だった。
「ここは、大切な思い出の場所だから」
振り返ったアルフリートが、リディアーヌに微笑みかける。
「今はアルと呼んで欲しい」
「……アル?」
「どうかこれを身につけて。俺とずっとともに歩んでください」
小さな箱には、金に煌めく指輪、深海の色をした宝石があしらわれていた。青い石の中にインクルージョンが金色にキラキラ煌めいている。
「俺の妻になってください。幸せにすると誓うから」
「喜んでお受けします。……アルは、幸せですか?」
ずっと、リディアーヌが探していたアルフリートを幸せにする方法。青い鳥はここにいたのか。
「世界で一番幸せです」
その笑顔と言葉とともに、リディアーヌの努力は全て報われていく。指に煌めく瞳の色がその誓いを形として表していた。




