聖騎士は聖女を溺愛する
後日談です。
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「あんなのおかしいわ」
リディアーヌはひとつため息をついた。今はエリーゼも先を外していて部屋に一人だ。
「あれが褒美って、あの先があるってどういうことなの?」
リディアーヌは人生を繰り返しているが、アルフリートくらいしか男性ときちんと関わったことがない。このため、これがまったくもって普通なのかそうでないのかさっぱりわからないのだ。
ただ、いつものアルフリートとは全く違った新しい一面を見てしまった。ただそれだけの話なのかもしれない。
あれからも魔獣の脅威は消えていない。だから、今日もアルフリートは戦いに出てしまった。リディアーヌも本当は一緒に行きたかったのに、今回はバルトルトに懇願されて残り、かわりエリーゼが魔獣討伐に同行している。
『リディアーヌ様!内政がマジでやばいです。たしか繰り返しの中では王国の内政にも関わっていたっておっしゃってましたよね?勇者のワンマンで回ってたから、レ-ヴェレンツ家の者だけでは限界なんですよ!行かないで――――!!』
バルトルトは、勇者が居なくなる直前にキサラギ領の宰相に任命された。しかし、なんだか領主代理というか、キサラギ領の規模は王国に迫る勢いなので国王代理みたいな仕事までしているらしい。
リディアーヌが手伝えることは限られているが、聖女として外交面での手伝いをしている。王国では先陣を切って魔獣と戦った第三王子が王太子に内定しているらしい。イリーネともその関係で時々顔を合わせている。
「アルフリートさまが大変なのはわかるけど……会いたいわ」
(でも、次会うときには続きをするって言ってたわね?本当に何をするのかしら)
そんなことを呟いたとき、左手の手首につけているコルタナがフルルっと震えた。
「聖女様。よろしいですかな」
振り返ると長老が立っていた。3歳児の姿でここまで一人で来たのか。大丈夫なのだろうか。
「どうなさいましたか?」
「いや、婿殿とエリーゼの件で」
そういえば、バルトルトがエリーゼに短剣を渡したことで、2人の婚約は確定したらしい。しかし、リディアーヌとアルフリートが結婚するまでは、ぜったいに婚約しないというエリーゼの意思で保留になっているという。
「あ!ここにいたんですか長老。こういうのは本人の意思がですね」
忙しく働いているはずのバルトルトが、慌てた様子で長老を追いかけてきた。
「だまれ、このヘタレ。ワシは生きている間に可愛い赤子が見たいと申しておろうが!」
「うわー。なんか婚約が内定したとたんこの物言い。騙された感が半端ない」
「国の重鎮が何を言うておる。そもそも、キサラギ領をいま回しているのはそなたであろう。他国から婚約の打診が来ているのを知っているのだぞワシは」
たしかに、聖女と勇者として公認のようなリディアーヌとアルフリートと比べ、未婚で高い地位のバルトルトと縁をつなぎたいというものは山ほどいるだろう。
さらに、レ-ヴェレンツ商会は武力の面でも、一般の商いでも群を抜いた影響力を持ち始めた。
「……全部お断りしてますよ」
少し顔を赤らめたバルトルトにニヤリと笑う長老。結局二人が何をしに来たのかよくわからないが。
(まあ、エリーゼが幸せなら私は構わないわ)
「ここにおられましたか。国王代理殿!」
「だから、国王代理じゃないっていってるだろ?!ギルマンいいかげんに……スミマセンデシタ」
武力では最底辺のバルトルトは、ギルマンの覇気に即座にあやまり、そのまま連れていかれてしまった。
「エリーゼには幸せになってもらいたいわ」
「そうですね。ワシもそう思うております」
でも、2人が婚約を正式にするまでは、もう少しかかりそうだ。リディアーヌと長老の意見は同じものだった。
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