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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第3章 理は崩れていく
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真の勇者は

物語はクライマックスに近づいています。あと何話になるかはわからないのですが、更新の頻度を上げていきます。


 勇者と女神が消えた世界。アルフリートは急に体が重くなるのを感じた。それと同時に、金色に輝いていた瞳はもとの深海の色に戻っていく。


「ああ、確かに理の力は大きかったな」


 確かに先ほどまで勇者がいた場所に、聖剣だけが落ちていた。それを拾い上げると、アルフリートは軽くそれを振る。


「だが、これで手加減する必要もなくなった」


 アルフリートが、異常な速度で強くなっていったのは、理の力が大きかったのだと人はいうだろう。だが、アルフリートだけはそれだけではないことを知っている。


 リディアーヌにコスモスのトンネルで出会ったあの日から、アルフリートは血を吐くような努力を続けてきた。そう、他の誰よりも。


「待っていてください。リディアーヌ様」


 アルフリートはその言葉の直後には、魔獣を一体屠っていた。その動きは、先ほどよりも劣っているようにはとても見えなかった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 同じ時、魔獣と戦いながら王都を守ろうと奮闘しているリディアーヌも、身体強化をしている光魔法が弱くなったのを感じた。


「理の力がなくなると魔力の絶対量が、こんなに減るのね。理の力はもう感じられない……勇者さまと女神さまは」


 そこから予想されることは、あまりに辛いから、今は剣の腕を鈍らせないためにもリディアーヌは思考を頭の片隅へと追いやる。今できることは、イリーネと合流する事、ただそれだけ。


「イリーネ!」

「お姉さま!なぜここに」


 やはりイリーネは、王都のミカミ伯爵家の屋敷にいた。人々をかくまいながら、光魔法で障壁を作り戦っていたようだ。


「お姉さま、ご無事でしたのね」

「ええ、心配をかけたわ。イリーネも無事でよかった」

「……お姉さま、女神さまに助けて頂いたんです。でも、女神さまが走って行ってしまった直後に力が急に減ってしまって。その変わりに次々と忘れていたことを思い出しました」


 イリーネが見やるその先には、第三王子エドワルドの姿が。剣をもって前に出て戦っているようだ。


(エドワルド殿下は思ったよりずっと強いのね)


「お姉さま、この量の魔獣を私たちだけで倒し切るのは難しいと思います。お姉さまだけでも、王都からお逃げになってください」

「それはできないわ。だって、私たちがこれから先の未来を生き残っていくためには、現時点で王都を失うわけにいかないもの。大丈夫、1週間持たせれば頼もしい援軍が来る算段はついているの」


 それに、アルフリートはここに向かっている。それは信じているだけではなく、もはや確信に近い。


(光の魔力が激減していたって、この体にしみ込ませてきた身体強化の使い方も、できる限り魔力を温存しながら戦うすべも忘れることはない)


 これからはもう光をまとって黒龍にとどめを刺した時のようには戦うことはできないだろう。多くの魔力を使って戦うのは、魔力が切れてしまえば、大幅に力がなくなってしまうリディアーヌにとっては最大の悪手だ。


「それでも、今までの努力は消して失われなかった。イリーネは後方からの援護をお願い!」


 エドワルド殿下のそばに走りよると、リディアーヌも前線へと加わった。アルフリートを助けるための繰り返しは、今ならすべて思い出すことができる。


(アルフリートさまを幸せにして見せるんだから。絶対に!)


 伯爵家にかくまわれた人々は、黒髪に黒い瞳をした聖女が自分たちを守るために戦う姿を目に焼き付けた。美しく強い彼女が、まさしく聖女であることはだれの目にも明らかだった。

 今までなぜ自分たちが、彼女を理外れだとあんなにも憎んでいたのか。今となってはもう誰にもわからない。だが、人々は彼女から確かに勇気を受け取る。


 戦えるものすべてが、武器を手にしてリディアーヌとともに戦う道を選ぶ。本当の意味での戦いが今始まった。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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