表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第3章 理は崩れていく
50/63

女神との邂逅

お越し頂きありがとうございます。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 眩い光に包まれて、思わず目をつぶったリディアーヌが、次に目を開けた時、そこは真っ白な空間だった。


 だが、そこにいつも佇む女神が見当たらない。代わりに、イリーネが立っていた。


「……お姉、さま」

「イリーネ、あなた」

「忘れたくないと思っていたことは覚えているのに。まだ、今はお姉様だとわかるのに」


 イリーネは、かなり聖女としての力を使ったようだ。その言葉には混乱と困惑が見てとれた。


「なんで……。なんでそんなに力を使うことになったんですか?」


 リディアーヌは、慌ててイリーネを抱きしめる。


 それにしても、ここまで記憶が消えるほど力を使うなんてあり得ない。理外れではないイリーネは、リディアーヌほど影響がないはずなのに。


「魔石を額に埋め込んだ魔獣が、王都にたくさん現れて……。キサラギ領にも、そろそろ伝令が届くはずです。でも、先程この女神の神託の場に……」

「女神さまは……」

「呼ばれた瞬間は、いつものように微笑んで佇んでいたんです。でも、急に表情が変わって」


(あの声、コルタナから聞こえた声は、女性の声だった。イリーネにとても似てる。そして、何かが起こっている。早く戻らなくては)


 手に握ったままのコルタナが、また震えた気がした。目線をそちらに移したリディアーヌは、息を呑む。


「コルタナが、白銀になってる……」

「お姉さま。私、戻りたい。とても大切な、大切ななにかを王都に置いてきているんです。戻らないと!」

「イリーネ。まさか」


 愛する人を忘れる聖女の宿命。前回会った時、第三王子に笑いかけていたイリーネの笑顔。


「あの、第三王子……エドワルド殿下はどうなさったの?」

「え?誰……ですか?王子……様。そう、聖女は王子様を守る。これは忘れてはいけないの」


 イリーネが、眩い光を放つ。


「これ以上、力を使ってはダメ!!」

「ごめんなさい。お姉さま。これだけはどうしても、譲ってはいけないんです。……またお会いしましょう」


 そのまま、光に巻き込まれて気づくと、勇者の前に立っていた。


「リディアーヌは、いつも予想外のところから現れるね?コルタナが言ってたよ。前回は隠し通路から現れたって?」


 勇者はいつもの様子だった。だが、すでに出立の準備が整っているようだ。


「リディアーヌ、ありがとう。俺たちの理を壊してくれて」

「勇者さま」

「俺はもう、勇者じゃない。唯のシンジだ。力も弱まっているし、命も無限じゃない」

「でも、戦うんですか」


 リディアーヌは、初めて勇者の本当の笑顔を見た気がした。


「ミナトが、戦ってるからね。それにまだ、アルフリートくらいの強さはあるんだよ?次は君たちを理から解き放って見せる」


(え?それは、弱まったと表現していいものなのかしら)


 どう答えたらいいのかと、リディアーヌは思案していると、ギルマンとバルトルトが入ってきた。


「あ、バルトルト。やっと来たか」

「は、お呼びと聞き参上いたしました」


「君、今日から宰相ね?俺、出掛けてくるから。内政の全権はバルトルトに預けるよ」

「は?何言ってんだ、魔王……。僕のこと、そんな信頼してると痛い目見るって何度も言ってるだろ?」


 勇者は、バルトルトに歩み寄って肩を叩く。


「これからの政治は、武力よりも知力だ」

「……え?冗談じゃなく、本気?!」

「信頼してる。バルトルト、よろしくな?」


 そう言い残して、勇者は消えた。


「転移の宝珠……。やられた。ああ、やってやるよ。どうなっても知らないからなっ」


 バルトルトは、リディアーヌに視線を移す。リディアーヌも、後始末は頼りになるバルトルトに全投することに決めた。


「リディアーヌ様、アルフリートに連絡しておきますね。あいつ、リディアーヌ様が急に消えたせいで、このまま放っておくと暴走しかねない」

「……私も先に王都に行くと伝えてください。待ってますと」


 バルトルトが、目を見開く。


「は?そんなのアルフリートになんて説明……あ!リディアーヌ様まで、いざという時にって渡してたそれ使うんですか?!」


 転移の宝珠は、こういう時に使うのだとばかりに、リディアーヌもその場から再び消えた。


 




バルトルトの苦難は続きますが、本人はそこまで嫌がってはいないと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] シンジにミナト、イリーネにエドアルド殿下、そしてリディアーヌにアルフリート様、 皆が王都に集まった時、何が起こるのでしょう? どきどきします、皆の無事を祈ってます〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ