理の崩壊
リディアーヌは、謎の失踪?を遂げます。
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リディアーヌの一閃が黒龍の喉元に刺さる。だが血が噴き出ることはない。そのかわり、リディアーヌの剣、コルタナが強く震える。
(浅かったの?仕留め損ねた?)
だが、その瞬間、コルタナが眩い光を発した。眩い光があたりを包み込んでいく。
黒龍が鈍い音を立てて、地面に倒れ込んでいく。ここに確かに、歴史が変わった。
それと同時に誰にも見えない場所で、理が崩壊していく。
「リディアーヌ様?!」
アルフリートがリディアーヌのいた場所に駆け寄る。しかしそこに、確かに黒龍にとどめを刺したはずのリディアーヌの姿はなかった。
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一方、今日も今日とて、バルトルトは働いていた。
だが、今のバルトルトの仕事は書類業務ではない。書類業務は、バルトルトよりも優秀なレーヴェレンツ商会の事務員たちに奪われてしまった。
「序列四位殿、こちらの計画はどう思われますかな?」
「え?学校、しかも子ども達のですか?まあ、識字率が上がるのと、うん。この給食というのはいいですね。資金はどこから?」
「我が君は、国民から集めた税で公共事業を行っておいでです」
「ふーん。じゃあ、何か特産物をもっと考えないといけないな。あ、海に面してますよね?塩はどうなっているんですか?」
次々と意見を出しながらも、『やっぱり100年は他国より進んでるよなぁ。』というバルトルトの呟きを聞いて、ギルマンは口の端を釣り上げた。
「ところでアレの生産はどうなりましたか?」
「…………生産は軌道に乗りましたよ。今週中に100丁は作れるでしょう。あんな悩んだ設計図、あっという間に修正しちゃうんだものなぁ」
「…………我が君ですから」
「火魔法を使った熱が原因だったなんて。同時に氷魔法の冷却機構を組み込むとか、なんでそんなことが可能なんだよ」
(ああでも)
バルトルトは口の端が緩むのを感じた。バルトルトの手には、最後の一歩で完成していなかった短剣が握られている。
(そっか。お前も、持ち主のところにようやく行けるのが嬉しいみたいだな)
短剣は、シンプルな作りで凝った装飾があるわけではない。だが、決して破壊されることがないだろうミスリルと魔鉄の比率。それに、今回の勇者の意見を試した結果、やっと成功した特別な機能が備わっている。
バルトルトに語りかけてくる短剣は、輝いているように見えた。
「さて、アルフリートのことはあまり心配してないんだけど、リディアーヌ様は大丈夫かな?」
「序列四位殿。さ、休憩は終わりです。今度はこちらを検討しましょう」
「うわー。またこんなに持ってきて…………」
うんざりした表情をしながらも、再び真剣な表情でバルトルトは書類に目を通し始めた。
アルフリート「リディアーヌ様のいない世界に用はない」
次回 アルフリート暴走
すみません。誤情報です。まあ、ある程度は暴走するかもですが。




