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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第2章 闇の聖女と暗黒騎士は未来を塗り替える
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黒龍

リディアーヌが活躍します。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 咆哮が空気を揺らす。ソレはいつでも圧倒的な力を有していた。


 400年に一度生まれるソレは、勇者という名のたった一人を除き倒せるものはいない。それがこの世界の理。


(その理は今日で途切れる。途切れさせる)


「リディアーヌ様。貴女に勝利を捧げます。だから、褒美は頂きますよ?」

「勝ってください。アルフリートさま。私は皆さんの命を守って見せます」


 アルフリートの右目は、いつもの深海の色だ。それは絶対の自信の現れ。


「おーい。俺も忘れるなよ?まだ、黒騎士の兄さんには敵わないけど、すぐ追い抜いてやるからな?」


 キースが、頭の後ろに手を組んで笑っている。


(いつも、この場面には絶望しかなかった)


「闇の聖女殿。悪いがおそらく出番はない。トドメは俺がいただくしな?」

「ギュンターさま。頼りにしています」

「ん!任せろ?しかし、アルフリート殿。そう睨むなよ?闇の聖女殿が可愛らしいのは、俺のせいではないぞ?」

「お褒めいただき、光栄です?」


 朗らかなギュンターの笑い声は、この場にはそぐわないのかもしれない。それでも、その場の緊張感を吹き飛ばしてしまう力があった。


 その黒龍は、圧倒的な存在感を有している。


 ここに、勇者の名を冠したものはいない。しかし英雄ならいる。


 それぞれの剣が、美しい軌跡を描いて黒龍に向かう。もしも、後世この場面が語られるなら、おそらくそれは壮大な叙情詩としてだろう。


「はっはぁ!一番槍は俺がいただくぜ!」


 スピードは、多分この中で一番速いキースが、黒龍に最初の一撃を加えた。


「うわ。硬いなっ!まじでアルフリートの兄さんとギュンターの旦那はソロでこいつ倒したのか?!」


 無言のまま、アルフリートが次の一撃を決める。その一撃は、美しい剣舞のようなのに、以前とは違い荒々しい。


 アルフリートの剣は、今は美しいだけでも、己を傷つけてしまうだけの恐ろしさでもなく、ただ強くしなやかだ。


――――グオオオオオ…………


 黒龍が咆哮を上げる。おそらく、こんな敵に会ってしまったのは、400年の繰り返しの中でただ一頭。


「俺も忘れてくれるな?お前を屠るのは、勇者じゃないんだよ」


(こんなに圧倒的な戦い。今まで見たことなかった)


 その時、リディアーヌの左手首のコルタナが強く輝いた。そこに現れたのは、白銀の剣。


――――お願い。貴女が倒して。


「え?」


 聖女は勇者を守る。それがこの世の理。でも、その、大前提が覆されたなら?


 リディアーヌは、黒龍を見やった。


(分かる。あと少し。そう、圧倒的なこの場面に、聖女は必要とされていない。ただ、求められるのは力だけ)


 リディアーヌは、身体強化に全ての魔力を注いだ。後の事は考えずに魔力の全て使う。


――――シャラン。


 コルタナがそれで正しいと言うように震えた。リディアーヌは、白銀の剣を握りしめる。


 流れ星のように美しく輝く一撃は、黒龍の喉元へと突き刺さった。





次回から、第3章。繰り返していた物語が動き始めます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ギュンターを睨むアルフリート様(^◇^;) そんな余裕のないところもスキ笑 コルタナを使ったリディアーヌの一撃!美しいです^_^ [気になる点] リディアーヌを導くコルタナが気になります。…
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