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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第2章 闇の聖女と暗黒騎士は未来を塗り替える
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お嬢様とメイドは未来の約束をする

ご覧いただきありがとうございます。

 

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ギュンターが去ると、急に部屋の中が広く静かになった気がした。そしてギュンターが去ったため、再びアルフリートは扉の前に控えたようだ。


「嵐のようなヒトだったわ」


 振り返ると、エリーゼが無表情な中にも、何か言いたそうな雰囲気でこちらを見ている。


 言いたいことはすぐに口にすることが多いエリーゼにしては珍しい。


「エリーゼ、何か私に言いたいことがある?言いにくいことなの?」


 エリーゼは少し驚いたように目を開いて、その後苦笑した。

「お嬢様には敵いません。そんなに顔に出てしまっていましたか?」

「うーん、何となくよ?」


 おそらくリディアーヌ以外のものが気付くことはないほどの、些細な雰囲気の変化だった。


「……お嬢様。しばらく私はお暇をいただきたく存じます」

「エリーゼ……?」


「実は、辺境伯領北端では、最近何体か魔獣が目撃されているらしいのです。その件で、本当はキースとともに一度里に戻るように言われていたのですが」


 ドクリ……と、リディアーヌの心臓が嫌な音を立てて跳ねた。


(そうなのね。以前の人生では、王都に応援依頼されるのが約1ヶ月後。この時期には既に辺境伯領の北端では魔獣が……)


「アルフリートさまや、それにギュンターさまと戦うのではいけないの?私だって……」


 春の雪解けのように、そのアイスブルーの瞳を滲ませて、エリーゼが微笑む。

「お嬢様。私はお嬢様の元で、人の心を取り戻せた気がします。ただ、復讐だけを誓っていた幼い私を救ってくださったのは、お嬢様の暖かさです」

「エリーゼ……」


(これはエリーゼにとってなによりも大切なことなのね。私には止めることが出来ないのだわ)


「私も守りたいものを、もっと増やしてみたい。私は里に戻ろうと思います。それに……」


 エリーゼの春の雪解けのような微笑みは崩れ、闇を湛えたまま満面の笑顔になる。

「今まで他人に守られたことなどなかったのに、よりによってあのバルに守られてしまい、このままでは私のプライドはズタズタです。これから私は、私のお嬢様にまとわりつく、あの邪魔な犬を捌けるくらい強くなるつもりです」


(魔王軍の序列一位に選ばれた実力のヒトを捌く……。もしかしてソレは世間一般的には魔王と言うのではないかしら?)


「そしてお嬢様。もし我儘を聞いていただけるなら、あの双子のことを、お願いできますか?」

「ええ、もちろんよ。でも……エリーゼ?何かあるの?」


 いつも無表情を守っているか、冷笑しているように見えることが多いエリーゼの表情が、今日はクルクルと変化する。


 何かを思い出している様子でしばらく沈黙した後、眉尻を下げたエリーゼは呟いた。

「……あの双子の境遇は、私ととても似ているのです」


 エリーゼは、自分の生まれや境遇は、今まで頑なに語らなかった。前回までの人生では、ハイデの里についても決して語ることはなかった。


 ――――エリーゼ、そなたの両親と弟のことは申し訳なく思っておる。

 ハイデの里で長老が話していた言葉が、思い起こされる。


 今までもリディアーヌは、エリーゼの過去に何かがあったことは察していた。でも、エリーゼが自分から話すまではと無理に聞こうとは思わなかった。


 しかし今回、彼女の故郷であるハイデの里に、リディアーヌを連れて行ったことで、エリーゼの運命も大きく変わっていくのかもしれない。


「エリーゼ、貴女は願いが叶ったらまた私のところに帰ってきてくれる?」

「お嬢様がお赦しくださるなら、必ずや帰って参ります。お嬢様も、無事でいると約束して下さいますか?」

「もちろん、約束するわ」


 約束は好きではない。守られなかった時、あまりに辛く悲しいから。2人はその事を誰よりも良く知っている。


 それでも、2人はお互いに約束をしないではいられない。いつかまた会う日のために。



最後までご覧いただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エリーゼとしばしのお別れですねT^T 願いが叶いますように
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