ポーション売りの日常
「ポーションはいりませんかー?」
町に帰ってきてからのシィルは前と変わらずにポーション売りにいそしんでいた。
一応王都でトラブルに巻き込まれたお詫びと謝礼をかねてお金はもらっていたのだが、それでも何かをしていないと気が済まなかった。
「あっ、シィルさん! お戻りになられたのですね」
うれしそうな顔を見せてくるエリー。
シィルの方に近づいていくと笑顔で話しかけてくる。
「えぇ、ついこの間帰ってきたのですよ。それで今日はどうかしましたか?」
「私も販売を手伝わさせてもらいますね」
前と同じようにシィルの隣にたつと声を上げて客引きを手伝ってくれる。
「そういえばシィルさんはいつまでこうやって路上で販売をされるのですか?」
「いつまでって……」
「今回の件でかなりお金をもらったと聞きましたけど、それでお店を営んだり……とかはされないのですか?」
お店か……。さすがにポーションしか作れない自分がお店をするなんて想像もつかなかったけど、確かにこれだけ買って行ってくれる人がいるならそれも考えてもいいかもしれないな。
「そうだね。ちょっと考えてみるよ。僕だけの問題でもなさそうだから……」
いつも薬を買ってくれているリエットや家にいるリウにも相談しておかないとね。
そう考えながらも心の中ではすでにお店を開くことを考えていた。
次の日、早速冒険者ギルドへとやってくるとリエットがうれしそうに近づいてくる。
「シィルくん、今日もポーションを販売しているの?」
「今日はリエットに少し相談がありまして……」
「私に? どうかしたの」
「実は僕、お店を構えようかなと思いまして……。それでいつもポーションを買ってくれるリエットに相談したくて――」
シィルがすべてを言い切る前にリエットは大声を上げる。
「それはいいね!! うん、確かにシィル君はお店を構えるべきだよ! 毎日買いに行くよ!」
想像以上に好意的にとられる。
リエットは自分がお店を開いてくれるのを楽しみに待っていてくれたようだ。
「それで、いつ、どこでお店をするのかな?」
「そ、それはまだこれからで、これからリウにも相談しようと思ってるところなんだよ」
「そうなんだ……、また決まったら教えてねー!!」
大きく手を振るリエットと分かれた後、シィルは自分の家へと戻っていった。
「あれっ、お兄ちゃん? 戻ってくるのはやいの」
家に帰るとリウが不思議そうな表情を向けてくる。
「うん、今日はいろいろ相談をして回っていてね。リウにも聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何でも聞いてくれたらいいよ」
リウが頷いたのを確認するとシィルは先ほどリエットにしたのと全く同じ質問をしてみる。
すると、リウは顎に手を添えて少し考え込んでいる様子だった。
「お兄ちゃん、本当に大丈夫? 今の状態でもいろんなトラブルに巻き込まれているのに、それが余計ひどくならないかな?」
確かにお店を構えることで今までは身軽だったものが、簡単に動けなくなってしまう。
今以上にトラブルに巻き込まれる可能性はあるわけだ。
「それもしっかり考えないといけないね。うん、ありがとう」
シィルがリウの頭をなでてあげると彼女はうれしそうに目を細めていた。
新作始めました。
タイトル
最弱魔王、鑑定能力で成り上がる
あらすじ
鑑定能力しか持たない最弱の魔王に転生した主人公。
しかし、その鑑定で他者の隠された能力を見抜くことが出来た。
「う、嘘だろ。メイドなのに筋力が1000以上の数値があるのか!?」
「……? 私はただのメイドですよ?」
筋力に特化のメイド、殲滅魔法に特化の少女……など、自分の能力を知らない配下を集めていき、やがて最強の軍団と呼ばれるようになっていく。
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