ポーション売り、町に戻る
一日ゆっくり城で休ませてもらったシィル達は次の日、町へと戻っていった。
マリナが悲しそうな表情を見せていたが、最後には笑みを浮かべてくれる。
「また、会いに行きますからね」
シィルに近づきながら告げてくるマリナ。そして、彼の頬に自分の口をそっと当てる。
「えっ!?」
驚きの声をあげるシィルに対して、マリナはどこかいたずらが成功した子供のようにそっと舌を出していた。
「これ以上のことはまた次に会ったときですね」
それだけ告げるとマリナは顔を真っ赤にしてお城の方へと戻って行ってしまった。
◇
ゆっくり馬車に揺られながらシィルは先ほどのマリナの行動について考えていた。
どうしてマリナは自分にキスなんてしてきたのだろう?
首をかしげても答えが出てこない。
何せ自分はただのポーション売り。相手は一国の王女様。
どう考えても釣り合わない。
そんなことは自分以上にマリナが知っているはずだった。
それならどうして――?
シィルがクビをかしげているのを見てリウが声をかける。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「いや、さっきのマリナのことなんだけど……」
もしかして同じ女性であるリウなら何かわかるかもしれないと彼女に期待を寄せながら聞いてみる。
しかし、リウはすぐにそっぽを向いてしまう。
「お兄ちゃんの浮気者……」
結局、リウからも何も教えてもらえずに、また、ずっと頭をひねっていても答えが出なかった。
しかたない、今度マリナに会ったときに聞いてみよう。
それよりも久々に町へ帰ってきたなぁ……。
馬車から降りたシィルは大きく伸びをすると町の懐かしさをかみしめていた。
すると町の方から大きく手を振ってくる少女の姿を見かける。
「あっ、シィルさぁぁぁぁぁん。おかえりなさーい!」
元気よく手を振ってくるのはギルドで働いている少女のリエットだった。
「ただいま、リエットさん」
シィルも手を振り返す。するとリエットはさらに大きく笑顔を見せていた。
「お久しぶりです。王都のお祭りはどうでしたか?」
「うーん、楽しかったけど、いろいろトラブル続きで大変だったよ。やっぱり僕にはこの町がいいな」
のんびりとした雰囲気。毎日の生活は大変なものの特に困ることはなく、住むところも確保できた以上、トラブルが起こらないこの町の方が住み心地はよかった。
「それもそうですね。私もこの町の雰囲気が好きですよ」
リエットがはにかみながら言ってくる。そして、何か思い出したかのように聞いてくる。
「そういえば、まだポーションって余ってますか? よかったら一本売ってもらえませんか?」
「うん、まだ余ってますよ。どうぞ」
シィルがポーションを渡すとリエットがお金を払ってくれる。
前までの日課だった行動をとることによってシィルは改めて町へと帰ってきたんだと実感できた。
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