お風呂
シィルは案内されるがままにお風呂へとやってきた。
王城の浴場というだけあって、そこにあったのは遊に泳げそうなほど広いお風呂だった。
お湯に浸かりゆっくりくつろぎ始める。
すると突然浴槽の扉が開く。
ただ、これだけ広い大浴場なんだから、他の人が入ってきてもおかしくないよね。
そう思いながら入ってきた人を見るシィル。
そこにはマリナとリウの姿があった。
「シィルさん、お背中お流ししましょうか?」
タオルだけ巻いた状態のマリナがシィルに近づいていく。
ただ、シィルは驚き過ぎて口をパクパクするだけで、それ以上の反応はできなかった。
「……お兄ちゃんの背中を流すのはリウだよ!」
シィルの背中に飛びついてくるリウ。
その顔は真っ赤で照れているのはよくわかるが、それでもシィルから離れようとはしなかった。
「いえ、私が……」
「リウが……」
二人して、シィルを取り合ってくる。
ただ、シィルはようやく我に返り、二人から離れる。
「それで、どうして二人は一緒のお風呂に入ってきたの?」
マリナたちに向かい合うように座るとシィルは確認を取った。
「このお風呂は混浴ですから……」
マリナがいたずらが成功したと言いたげに小さく舌を出して言ってくる。
「なるほど……」
それならここに二人がいてもおかしくないわけだ。
でも、こうやって三人で湯船に浸かって見つめあっていると恥ずかしく思えてしまう。
「ぼ、僕はもうあがるね」
シィルが湯船から出ようとするとリウが後ろからしがみついてくる。
「お兄ちゃんはまだそんなに入ってないの。もっとゆっくり浸かって欲しいの」
リウが再びシィルを湯船に戻す。
「でも……。ほらっ、僕も男だから――」
さすがに居心地が悪くなってくるシィル。
目の前には平然とシィルのことを見ているマリナ。
後ろには恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているリウ。
でも、シィルの手をしっかり掴んでいるので出て行くつもりはないらしい。
そんな状態だから何も出来ずに黙ったまま湯船に浸かり続けていた。
そして、時間が経つ。
だんだんとのぼせてくるシィル。
でも、しっかりとリウが掴んでいるので出るに出られない。
そして、そのままシィルは倒れるまで湯船に浸かり続けてしまった。
◇
「お兄ちゃん、大丈夫?」
目が覚めると目の前にリウの姿があった。
「よかった……。シィルさん、もう大丈夫ですか?」
心配そうな表情を見せるマリナ。
二人ともタオル姿のまま。そして、シィルが寝かされているのは脱衣場だった。
「あれっ、僕は……?」
「シィルさん、のぼせて湯船で気を失ってしまったんですよ」
「あっ、そうなんだ……。二人ともありがとう……」
シィルは自分を看病してくれた二人にお礼を言う。
「……お兄ちゃんのポーションのおかげ」
「のぼせていたシィルさんにポーションを勝手に使っちゃったのですけど、よかったですよね?」
どうやら倒れたのが何かの病気なのかと心配してくれたのだろう。
「うん、それくらいならいくらでも使ってくれて良いよ」
『6歳のSランク冒険者だけど、平穏な生活を送りたい』が5000ポイントに届きました。
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まだお読みになられてない方はこれを機にぜひどうぞ。
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