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帰還

 激しい音を鳴らして入ってきたのはマリナだった。

 彼女はユースリッドのことを睨みつけていた。


「シィルさん、ご無事ですか!?」

「うん、大丈夫だよ。ご飯をごちそうになっていたところだよ」


 相変わらずのシィルの様子にマリナは苦笑を浮かべていた。


「それはよかったです。では、そろそろ戻りましょうか」



 ユースリッドの館で食事をご馳走になったあと、シィルはマリナに引っ張られるように王城へと帰ってきた。


 すると心配そうにリウが寄ってくる。


「お兄ちゃん、大丈夫だった?」


 リウに詰め寄られて僕は苦笑を浮かべていた。


「うん、見ての通り何もなかったよ」


 シィルが笑みを見せながら答える。ただ、二人はその言葉だけでは信じられないのか、シィルの体をペタペタと触っていた。


「本当に何もされてないね」


 その言葉でようやくシィルは解放される。


「とりあえずこれで安心かな?」


 どうにもふに落ちないマリナが答える。


「えぇ、もう大丈夫……だとは思いますけど、念のためにもう一日……、いえ、いっそのこと一生ここで過ごされてはいかがですか?」


 マリナが頬を染めながら言ってくる。


「いえ、あまり長居するとご迷惑になりますから僕はそろそろ……」


 流石にすでに数日泊めてもらってるわけだし、これ以上は悪いかなと思って言ってみる。


「そ、そんなことないですよ。それにシィルさんが帰ってしまったら気軽に会えなくなってしまいますし……」


 悲しそうに顔を伏せるマリナ。


「大丈夫ですよ、僕はどこにも行きませんので」


 あの家から出ていくようなことはしないだろう。


「でも、あの町にもライバルはたくさんいますから……」


 マリナが小声で呟いてくる。


 ライバル?


 そんな人いたかな?

 あの町にポーション売りは僕一人なんだけどな……。


 そんな見当外れなことを考えるシィル。


 シィルが気づいてないと分かるとマリナは大きなため息を吐いていた。


「とにかく今日はゆっくりしていってくださいね。もう遅いですから」


 すでに外は真っ暗になっている。

 たしかに今から出発するのは危険だろう。


 シィルが頷くとマリナは少しだけホッとする。


「では、出来る限りのおもてなしをさせていただきますね」


 にっこり微笑むマリナ。

 ただもう食事も食べたし、あとは寝るだけなんだけど……。


 そんなことを考えていると外にいる給仕の人がマリナに何か言っていた。


「……そう、わかったわ」


.


.

.


.


-


 マリナが頷く。そして、シィルに向かって言ってくる。


「シィルさん、お風呂が沸いたそうですよ。入りますか?」


 お風呂か……。確かに入ったら疲れが取れるもんな。それにこのお城のお風呂は少しきになるところだし……。


 少し悩んだシィルはマリナに向けて頷いていた。

『6歳のSランク冒険者だけど、平穏な生活を送りたい』が日間ランキング41位に入りました。

本当にありがとうございます。


まだお読みになられてない方はこれを機にぜひどうぞ。


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