回復
『最強の大賢者はスローライフがしたい』改め『スローライフがしたい大賢者、娘を拾う。』がMFブックス様より書籍化します。詳しい内容は活動報告にて。
シィルは拘束されたままユースリッドの館へと連れて行かれる。
どうして自分が呼ばれるのか……。
少し不安に思いながらもそれさえわかれば何とかなるかもとわずかながらの希望を抱いていた。
そして、シィルは拘束されたままユースリッドの前に連れて来られる。
じっくりとシィルのことを舐め回すように見るユースリッド。ただ、落ち着いた様子のユースリッドの顔はすぐに怒りの形相へと変わっていく。
「一体これはどういうことだ!!」
突然怒られたことに困惑しながらもとりあえずシィルは謝ることにした。
「ごめんなさい……」
「いえいえ、貴方に怒っているのではありませんよ。今この拘束を解いてあげますので……」
ユースリッドは手をすり合わせながら媚びへつらってくる。
そして、ここまでシィルを連れてきた部下たちへ向けて怒り出す。
「お前たちに言ってるんだ。連れて来いとは言ったが、拘束しろなんて言ってないぞ!」
「も、申し訳ありません」
自分をここまで連れてきた人が何度も謝っていた。
そして、拘束を解かれたシィル。
ユースリッドに案内されてこの館の食堂へ連れてこられた。
「さっきはすまなかった。君に頼みたいことがあって部下に頼んでいたんだが、どうやら勘違いしていたようだ」
「いえ、それはいいのですけど……」
自分に頼み?
こんな貴族の人が?
一体何を頼もうとしているのだろう?
「とりあえず、怖い思いをさせてしまったせめてもの詫びをさせてほしい。食事を準備させてもらった」
ユースリッドが手を一度叩くとあっという間にシィルの目の前にはたくさんの料理が並べられていた。
それは見たこともないような高級な食材を使った料理の数々だった。
「本当に食べていいのですか?」
「あぁ、こんなものでは君にしたことの詫びにはならないかもしれないが、是非食べてくれたまえ」
その言葉を聞いてシィルは目の前の食事を食べ始める。
すると食事をしてる最中にユースリッドが話しかけてくる。
「そのままでいいのだが、君に聞いてもらいたいことがあるんだ……」
ユースリッドが自身の右手を差し出してくる。
「実はこの手は色々とあって動かなくなってしまったんだ」
おそらく動かそうとしているのだろうが、手は一切動かない。
「それは……お気の毒に?」
どう反応していいのかわからずにシィルはとりあえず言葉を投げかける。
しかし、ユースリッドは首を横に振る。
「いや、君が申し訳なく思うことではないさ。それに私は君を……いや、君の持つポーションを探していたんだ」
僕の……ポーションを?
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