アランの負傷
すみません、すこし短めです。
シィルのポーションを再び飲んだ後、リウとリンダは何やらヒソヒソと小声で話していた。
それを訳もわからずにシィルは眺めていただけだった。
「おい、傷が本当に治っちまったぞ。あいつのポーションはどうなっているんだ?」
「シィルさんには言わないでくださいよ」
それだけ伝えるとリウは離れていった。
しかし、リンダはどうにも腑に落ちない様子でシィルのことをじっと見ていた。
◇◇◇
祭りの日が翌日に控えた日。一応リウに急かされて残り素材分のポーションは作ったあと、シィルたちは部屋で何を見て回ろうかと相談し合っていた。
すると突然部屋のドアが開き、ミリシアが慌てて入ってきた。
「シィルくんは? シィルくんはいる?」
ミリシアはシィルの姿を見つけると急いで彼の元へと近づいてくる。
「シィルくん、ちょっときて!」
そして、彼女はそのままシィルの手を掴むと彼をひきずったまま何処かへと向かっていった。
◇◇◇
ミリシアが連れてきた場所は王都から少し離れた場所であった。
そこには心配そうにしながら回復魔法を使うニーグと血を流し、倒れているアランの姿があった。
「シィルくんを呼んできたよ!」
「た、助かった、早く頼む!」
突然血まみれのアランの前へと出されるシィル。
「えっと、その……」
こんな状態で連れて来られても自分にできることは何もないんだけど……。
シィルは困惑しながらミリシアの顔を見る。
するとミリシアが焦った様子を見せながらも冷静に答える。
「もう十分回復魔法を使ったから、あとはポーションを使ってくれたら治るんだよ。ポーションでしか治せない傷なんだよ……」
そ、それなら……。
シィルは慌ててカバンからポーションを取り出す。
そして、ゆっくりとそれをアランに飲ませていく。
するとアランの傷は治り、次第に顔色も良くなっていく。
「よかった……」
その様子を見てたミリシアは安心からその場に泣き崩れる。
それでシィルはアランが完全に治ったことに気がついた。
そして、そのタイミングでお城からシィルのことを追いかけてきたリウやケリー、リンダが追いついてくる。
するとその瞬間にニーグが大声を上げる。
「誰だっ!!」
そばに置いていた槍を手に持つと近くの草むらにその矛先を向ける。
しかし、その草むらは揺らめいているだけで誰もいるような気配はなかった。
ニーグがその草むらに近づいていき、槍でその草むらを探る。
そして、何もないことを確認したあと呟く。
「なんだ、風か……」
そして、シィルたちの下へと戻ってくる。
◇◇◇
「それでどうしてアランさんはこんなことに?」
顔色が良くなったアランを担ぐニーグ。
そして、お城の方へと帰っている時にミリシアに聞いてみる。
しかし、彼女も小さく首を横に振った。
「私たちもよくわからないの。少し怪しい人物がいたからそれを三人で追いかけていたの。逃れられないように三手に分かれて怪しい人物は捕まえたんだけど、するとアランの姿が見えなくなって……。ようやく見つけたときはこうだったの」
「俺たちもどうすることも出来ずにとりあえず回復魔法をかけつつシィルを呼びに行ったんだ」
それで自分が呼ばれたんだな。
ただ、Sランクのアランがここまでの怪我を負う相手……一体誰なんだろう?
王城に戻りながらシィルは不安な気持ちになっていた。
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