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シィルのポーション

 ユースリッドと会ったシィル達は当初の目標が達成できたことで町の方へと歩いてきた。

 しかし、歩きながらリンダは憤慨していた。



「あのやろう、今度会ったら――」



 しかし、その瞬間に口を閉じてシィルのことを見てくる。



「んっ? どうしたの?」

「いや、何でもない」



 一応リンダの所持者となっているシィル。

 彼女が何かトラブルを起こすとそれは持ち主のシィルの責となる。


 それはシィルもリンダを購入するときに奴隷商から話を聞いていた。

 そして、シィルには奴隷を制御するすべもあった。


 奴隷には皆、その行動を御するために首輪なり腕輪なりがはめられていた。

 これには魔法のこもった宝石が備えられていて、そぐわない行動をしようとするものに電気魔法で意識を失わすことが出来る……という代物であった。


 それは当然リンダにもつけられている。

 そして、今は早まったことを言ってしまったのでシィルに電気を流されるかもしれないと思ったのだ。


 しかし、シィルは首を傾げるだけ……。

 はじめからそれを使うつもりがないのか、それとも今は何もしなくて大丈夫だとわかっていたのか、その別はわからないがとにかく油断のならない所有者だとリンダはすこし警戒を強めた。


 もちろんシィルはそんな複雑なことは考えておらず、「何を言おうとしたんだろう?」と首を傾げていただけだった。




 ◇◇◇




 シィルが街に出てくると早速たくさんの冒険者たちがやってくる。



「あ、あの……今日はポーションの販売はしないのですか?」



 さすがにマリナやアルタイルの前だとおどおどした様子を見せる冒険者たち。

 シィルは横目にマリナの顔を見る。

 すると彼女は苦笑を浮かべながら首を縦に振っていた。


 マリナはポーションを売ってもいいと言っているようだった。

 それならここに来ている人の分くらいなら売ってもいいかな?

 ただ、残りの数も少ないし……。


 シィルは集まっている冒険者の数を数える。

 六人ほどか……。


 何本か予備として持っておきたいことも考えてもまだ余裕があるな。



「わかりました。一本ずつなら大丈夫ですよ」



 すると冒険者たちから歓声があがる。


 それからシィルはポーションを売るといい時間になったのでお城へと戻っていった。




 ◇◇◇




 夜になり、部屋に二人きりとなるシィルとリンダ。

 本当ならリウもこの部屋のいたのだが、すでにシィルのベッドを使って寝息を立てていた。


 まぁこれだけ広い部屋なのだからシィルは床にでも寝ようと布団をかぶせてあげてからリンダと向き合う。



「あんたが助けてくれたんだってな。……何が目的なんだ? 少なくともあたいを助ける理由なんてなかったはずだ」

「えぇ、元々はユースリッドさんのことを聞こうと思っていたのですよ。どうも僕のことを狙っていたようなので……」

「あぁ、それは間違いないな。正確には噂のポーション売りを探していたみたいだ」



 噂のポーション売り……どういうことかはわからないけど自分のことが噂になっているようだった。



「でも、僕が作っているのは普通のポーションのはずなのに……」

「本当にあんたの作るポーションはただの(・・・)ポーションなのか?」



 ジッとシィルの目を見ながらリンダが聞いてくる。



「使っている素材から普通のポーションには違いないよ」

「いや、あたいは今あんたの奴隷で、あんたが稼いでくれればくれるほどあたいにもおりてくる可能性がある。だからこそ言うけどあんたのポーションはどう考えても普通じゃないぞ? そもそも普通のポーションを誰が銀貨一枚で買うんだ? それも列をなして――」


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