お金稼ぎ
奴隷となってろくに反応も出来なくなったリンダと出会った次の日。
シィル達はマリナにお金のことを相談しに行った。
「うーん、金貨一枚ですか?」
「はい、それを作るために町の中でポーションを売りたいのですけど」
「そのくらいならお父様に掛け合ってみればすぐに許可は下りると思うけど――」
どうにも歯切れの悪い返答……。
「何か不安なことでもあるのですか?」
「いえ、シィルさんが変な人に捕まらないかとかいいように使われないかとか考えてすこし自己嫌悪に陥りそうになっただけですよ……」
乾いた笑みを浮かべるマリナ。それを見てシィルは訳もわからずに首を傾げていた。
「お金がご入り用なのでしたら私がご用意いたしますが?」
「そ、そんなの悪いよ」
さも当然のように言ってくるマリナにシィルは慌ててそれを断る。
「いえ、シィルさんには色々とお世話になってますからこのくらいさせていただきますよ」
笑みを浮かべながらマリナが言ってくる。
そこまで言ってくれるならただ断るのも悪い気がする。
そこで少し迷ったシィルはある提案をする。
「それなら僕が数日でお金を稼げなかったら頼んでもよろしいですか?」
「はいっ!!」
シィルが借りる側なのに嬉しそうにしてくれるマリナ。
「あっ、そうだ。お金を稼ぐためにポーションを売るなら値段を少し高めに売るといいですよ」
マリナがアドバイスしてくれる。
でも普通のポーションなら相場は銅貨四枚。あまり高くすると売れなくなるんじゃないかな?
「どうしてですか? そうすると売れなくなるんじゃ?」
「多分最初の一本を売るのは大変でしょうね。ただ、あとは飛ぶように売れると思いますよ。……そうですね、一本銀貨一枚くらいにしますか? 金貨一枚でも売れるとは思いますけど」
値段を考え始めるマリナ。
ただその値段設定が明らかにおかしい。
銀貨なら中級ポーション並みだし、金貨なら上級ポーションと同じくらいだ。
しかし、困惑するシィルとは別にリウは同意するように頷いていた。
「うん、それがいいよ。でも普通のポーションと言うのはダメかもしれないね」
「それなら『シィルさんの作ったポーション』とかはどうですか?」
たしかに自分が作ったポーションに間違いはないけど、それでいいのだろうか?
シィルは首を傾げながら楽しそうに話すリウとマリナをただ眺めていた。
◇◇◇
そして、早速町に出てくるとポーション売りを開始する。
「ポーション、ポーションはいりませんかー?」
「兄ちゃん印のすっごいポーションだよー!」
さすがに大勢の前だとリウは恥ずかしがってもぞもぞとしていた。しかし、その分、ケリーが大きな声を上げてシィルのポーション売りを手伝ってくれる。
しかしやはり知らない町ではなかなか買ってくれる人はいない。
声を聞いて振り向いてくれる人はいるもののなかなか買うには至らない。
「うーん、やっぱりなかなか買ってもらえないね」
町に道具屋が……それもこれほど大きな町になら品揃えが豊富できっと上級ポーションクラスまで販売しているところがあるだろう。
そんなところとポーションしか売っていない路上販売……。
うん、町の道具屋に行くよね。
自分もそうする。
そう考えるとこの強気な値段設定はすこしまずい気がする。
しかし、横からリウが服をつかみ首を横に振ってくる。
「大丈夫……きっと」
リウがそこまで言うなら……と場所を変えながらシィルはポーションの販売を続けていく。
◇◇◇
そして、門の近くまでやってくる。
時間はすでに夕方……さすがにもうこれ以上は無理かなとシィルも諦め始めていた。
するとちょうど冒険者らしい四人組のパーティがちょうど帰ってきた。
依頼をこなしていたのだろう、四人とも大きな怪我はないものの体の至る所に怪我があった。
あの人達なら……とシィルは声をかけに行く。
「すみません、ポーションはいりませんか?」
「あー、そうだな……。いくらだ?」
四人組のうちの一人が聞いてくる。
「一本銀貨一枚です」
「少し高めだな……」
少し考えるそぶりを見せてくる。そして、お金を出してくる。
「よし、一本もらおう!」
ブックマーク9,000突破!!
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