食事と奴隷商
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「ケリー、この辺でおいしいご飯出してくれるところって知ってる? なるべく値段は安めで――」
さすがに高い料理のお店だと自分が払えないかもしれない。
そういうこともあり、シィルは近くで安いお店を聞いてみた。
するとケリーは少し悩んだ後、ハッとなり「ついてきて!」と言って先導してくれる。
そして、たどり着いたお店は狭い路地を入って少し先にある……王都にしては寂れているお店だった。
「ここ、特に値段が安くてオススメなんだ!」
ケリーが嬉しそうに言うとそのまま中へ入って行った。
◇◇◇
「らっしゃい! おっ、ケリー坊じゃないか。久しぶりだな」
中に入ると恰幅の良い男性がケリーに向かって話しかけていた。
それを少し照れ恥ずかしそうな顔で目を細めているケリー。
「それとあんたたちは……?」
男性がシィルたちをまるで値打ちするかのような目で見てくる。
「僕はポーション売りの……」
シィルが話そうとするのを遮ってケリーが言う。
「兄ちゃんはすっごいポーション売りなんだぜ!」
「ほう……、あなたがあの噂の……」
感心したように口に笑みを作る男性。
ただシィルには目だけが笑ってないように感じられた。
「私はこの店の店主をしておりますボロックです。どうぞよろしくお願いします」
手を差し伸べてくる。
先ほどのボロックの態度に不信感は抱きながらもケリーの知り合いならとシィルはその手を握る。
「僕はシィルと言います。よろしくお願いします」
「シィル……さんですね。ケリー坊がお世話になったようでありがとうございます」
先ほどの目が嘘のように笑みを浮かべてくる。
自分の見間違えだったかな?
シィルは少し首を傾げていた。
◇◇◇
ここでオススメの料理を食べたあと、シィルたちは再び町の散策へと戻る。
「そう言えばこの路地の先には何があるの?」
食堂の先……、更に薄暗くなっていき、ろくに店の名前が書かれていないお店ばかりが立ち並んでいる。
そこに何があるか気になったのでシィルはケリーに尋ねてみる。
「その先にはあまり近づかない方がいいよ。兄ちゃんには関係のない場所だから……」
目を伏せるケリー。
それを見てシィルは訳がわからずにただ首を傾げていた。
するとそんなシィルを見るに見かねたのか、リウが一人で歩いていく。
「あっ……」
驚くケリー。しかし、それを見てリウは納得したように頷いていた。
「……なるほどね。この先に奴隷商があるのね」
お金が払えなくなって借金をしたけどそれが返せないものや罪を犯したものがさせられる場合もある奴隷。
それを実際に販売しているのが奴隷商である。
「うん、そうだよ。ただ少し陰険なやつが店をしてるから……」
「誰が陰険ですか!? 全くケリーは余計なことをお客様に言わないでください!」
突然奥から現れたのは背丈がシィルより小さく、それを誤魔化すかのように高い黒色の帽子を被っていた男性だった。
綺麗に整えられたヒゲと高そうな服を着込んでいることからお金を持っている人であろうことは想像できた。
「えっと……あなたは?」
「これはこれはお客様……。私めはこの道の先で奴隷の売り買いをさせていただいておりますイーレンというものにございます」
「人の売り買いなんて許せる行為じゃない!」
ケリーが頬を膨らませて怒っていた。
「いえいえ、これは奴隷の方にも買主の方にもメリットのある売買にございます。奴隷の方は労働を……。買主の方は衣食住を……。これをしっかりと提供すること。それが奴隷契約の条件なのです」
言葉早に奴隷の説明を始めてからイーレン。
シィルは慌ててその間に割って入る。
「す、すみません、僕奴隷を買う気はないのですけど……」
「はい、それは重々承知しております。ですが、ご要望に沿った方が一人でもいるやもしれません。一度見学だけでもなさってはいかがでしょうか?」
ニコニコと微笑みながらイーレンがそう聞いてくる。
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