王都からの手紙
シィルが復活してから数日後、彼の家に突然手紙が届いた。
ただ、手紙と言ってもその距離が離れるほど費用がかなりかかってくる。
王都からシィルの家までだと金貨一枚くらいの費用が発生しても可笑しくない。
それほどの費用がかかるものを一体誰が!?
差出人を見るシィル。するとそこに書かれていた人物名を見て納得してしまった。
『マリナ・オードリア』
確かこれって第二王女のマリナのことだよね?
どうしてこんな手紙を送ってきたのだろう?
不思議に思い、手紙の中身を確認してみる。
そこには言葉短にこう書かれていた。
『近々お迎えにあがります』
と……。
流石にこれだけではどういった用なのか全く見当がつかない。
それを受け取ったシィルが手紙を覗き込むように格闘をしていると少し遅めに起きてきたリウが眠たそうにまぶたをこすりながら聞いてくる。
「お兄ちゃん? 何見てるの?」
「これ、僕宛に届いたんだけど意味がわからなくて……」
「私も見ていいの?」
一応シィル自身に届いた手紙だからか、断りを入れてくるリウ。
シィルが頷いたのを確認すると少し背伸びをしながら手紙を読み始める。
しかし、読み終わった後、やはりシィルと同じように首を傾げていた。
「うーん、迎えにくるよ……ってことには違いないんだろうけど」
「でも何のために来るとかそう言ったものが全く書かれてないし……」
「そもそも王女様からお兄ちゃんに手紙が来るのも変だよね……もしかしてお兄ちゃん、王女様とかとも知り合いだったりするの?」
ジト目でシィルのことを見てくるリウ。
「うん、まぁ知り合いといえば知り合いかな?」
「はぁ……一体お兄ちゃんの交友関係ってどうなってるの……」
リウが大きなため息を吐く。
たしかに冷静に考えて見ると自分の交友関係はおかしいよね。
冒険者ギルドの受付とギルド長、Sランク冒険者、貴族、果ては王族とも知り合いであった。
ただのポーション売りの自分にどうしてここまで人がやってくるのか……もしかして自分に隠された才能が……、ないよね?
「どうしたの?」
シィルが考え込んでいるとそれを不思議に思ったリウが聞いてくる。
「いや、何でもないよ……」
「……?」
流石に自分に隠された才能がある……なんてことはリウには言えなかった。
どう考えてもそんなことあるはずないのに。
ただ、どうしても完全に否定することだけはできずにモヤモヤとした何かが自分の中に残るのだった。
◇◇◇
あの手紙の内容ではどう言った要件かまではわからないので、とりあえずマリナがくるということだけ覚えておけば大丈夫かなと思っていた。
ただ、そのマリナが手紙の届いた次の日に現れたのでシィルは驚きを隠せなかった。
しかし、手紙を送った後にそのまま出発していたのだとしたらすぐに来たとしても不思議ではない。
そのマリナはシィルの顔を見た途端に顔を少し染め「会いたかったです……」と言って少し体を片寄せてきた。
それを思わず避けるシィル。
するとマリナは口を尖らせる。
「どうして避けるのですか!?」
「えっと、その、恥ずかしくて……」
マリナはそれを聞いて小さく微笑む。
「シィルさんは相変わらずですね……」
「そ、それよりわざわざ来るなんて何か用でもあったのですか?」
話題を変えるようにマリナに聞いてみる。
「えぇ、実はもうじき王都にて大きな祭りが開かれることになってまして……。よろしければシィルさんも参加されないかなと思ったのですよ」
王都か……。たしかに一度は行って見たいところでもあるけど、行くまでも大変だもんね。
「うーん、行っては見たいけど王都まで行く手段が――」
「そうおっしゃると思って私がきたのですよ。私と一緒なら移動には困りませんので。それで是非お祭りを一緒に……いえ、それでいかがでしょう?」
そこまでしてもらえるなら断る理由はないかな。
少し考え頷こうとしたその時にリウとケリーがやって来る。
「お兄ちゃんが行くなら私も行きます!」
「俺も王都には行って見たいな」
まぁかなり賑わってるという話は聞くもんね。行って見たい気持ちはわかるかも。
それを聞いたシィルはマリナにそのことを聞いてみる。
「えっと……、二人も一緒でいいかな?」
「はい、大丈夫ですよ。では行きましょうか」
マリナに連れられてシィルたちは彼女が乗ってきた馬車まで案内された。
22,000PT突破! 50話達成!
たくさんの人に読んでいただけたようで本当にありがたいです。
ありがとうございます。
この話にて第2章が終了となります。
第3章は王都周りでの話となります。明日から随時更新する予定です。
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