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ユースリッド

 嬉しそうにポーションを運んで行くリンダ。

 それを追いかけるニーグは見落としがないようにじっくり舐めるようにリンダの体を眺めていた。



「うーん、スタイルはいいな。貴族様の使いっ走りにしておくのがもったいないくらいだ」



 ついついいつもの癖で女の人が相手だとその体を凝視してしまうニーグ。

 ただ、脳裏にアランが出てきて「ちゃんと働け!!」と怒鳴ってくるので仕方なく真面目にリンダの追跡を続ける。


 ただ、追跡してて改めて思うことはこの盗賊は本当に盗賊なのか? ということであった。

 いくらSランクの冒険者とはいえ、ニーグは普段からこういった追跡をしているわけではない。


 どうしても完全に気配を消し切ることはできないだろう。

 それなのにリンダは全く気づく様子はない。

 盗賊ならこういった気配に敏感なはずなのに……。

 盗賊の経験が浅いのか、それとも周りの気配を集中できないような理由でもあるのか……。おそらく前者だろうなとニーグは当たりをつける。


 そして、リンダを追いかけているとそのまま王都までたどり着いてしまった。



「まさか王族が?」



 まず始めに浮かんだ相手が王族であった。

 ただ、リンダがポーションを運んでいった相手は王族ではなかったようだった。


 リンダが向かっていった先は貴族、ユースリッドの館だった。



「なるほどな。あの女盗賊を操っていたのはユースリッドか……」



 確かに彼なら捕らえた盗賊が小物なら自由に使えるくらいの力はあるだろう。

 しかし、王都の貴族か……。ユーグリッドだけじゃその相手は厳しいかもしれないな。


 あまり近づきすぎて気づかれては元の子もないのでリンダがユースリッド邸に入っていったことを確認するとニーグは王都を後にした。



 ◇◇◇



「でかした。これが噂のポーションか……」



 ユースリッドはニヤリと微笑む。

 それを見てリンダは悪態をつきたくなる。しかし、あくまでも自分を開放してくれるまでは伺いを立てておかなければいけないので何も言わずに側に控え立っていた。



「見れば見るほど普通のポーションにしか見えんな。それが今まであまり知られなかった理由か? それとも誰かが隠していたのか? とにかくよくやった」



 ユースリッドはとにかく満足げだった。

 ポーション売りを捕まえてこいというのはこのポーションが目的だったのだろう。

 とにかくここまで機嫌がいいと言うことは自分は開放されるだろう。


 その態度を見てリンダは少しホッとする。

 そして、ポーションの蓋を開けるとユースリッドはそれを一気に飲み干していた。

 しかし、己の体を見て不思議そうな顔をする。

 具体的に言えば動いていない右手を見て首を傾げているようだった。


 そして、偽物をつかまされたのではとわかり、わなわなと震え出す。



「リンダ―! お前、だましたな!!」

「えっ、いえ、そんなことは……」

「黙れ黙れ! 誰か、この女を牢に閉じ込めておけ! 儂に期待させたこと、倍にして返してやる!」



 それからリンダは兵士に連れられて牢へと放り込まれた。



 ◇◇◇




「そうか……。ある程度想像はしていたけどポーションを探していたのはユースリッドだったか……」



 ミグドランドは大きなため息を吐きながらいう。



「えぇ、そうみたいですね。ニーグがはっきりと彼の館に入って行くところを見たそうなので……」

「そうとなると私だけでは荷が重いな……。シィルくん自身の人脈を使わないことにはユースリッドを抑えられないだろうけど」

「そうなると気づいてしまいますよね?」



 アランがシィルのことを心配しながら言うとミグドランドも小さく頷いた。



「おそらく彼が王都に行って彼らに頼めばそれで解決するだろうけど……、王都に行く理由と彼らに会う理由。そして他ならぬシィルくん自身が頼まないと動いては……くれないよね?」

「国王様自身にシィルくんが会うなんて……そんな方法思いつかないけどね」

「とりあえず今は様子見するしかないか。シィルくんも風邪で寝込んでいるみたいだし……。何でも直せる薬を作れる彼が風邪で寝込むなんて想像もしていなかったよ。ポーション(・・・・・)は届けさせたから直によくなるとは思うけど」

「とりあえず、僕達の方で少しユースリッド様を探ってみますね?」

「あぁ、悪いが頼む。その間のシィルくんの護衛は別の人物に頼んでおくから」

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