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怪しい気配

「とりあえずお兄ちゃんは変な人に勝手について行かないでね!」

「……? う、うん……」



 リウが訳のわからないことを言ってくる。

 まぁこの町でポーションを売っている限り寄ってくる人は知り合いばかりだもんね。

 シィルは話半分にリウに頷いておいた。


 そして、ケリーに部屋を一通り案内し終わる。



「あとは好きにつかってくれていいからね。それじゃあ僕は少し町に出てくるよ」

「あっ、私も行きます……」



 シィルが家を出ようとするとリウがついてくる。



「それなら俺も一緒に行くぜ!」



 荷物だけ置いたケリーもついてくるようだった。

 本当ならケリーのお祝いに良いご飯でも買おうかと思ったのだけど……まぁそれはいいかな? 多分いつも通りなら――。



◇◇◇



 シィルたちが町に出てくると今日は珍しく大通りでライたちの兄弟と出会う。



「あっ、お兄ちゃんだー!」



 マヤはシィルの姿を確認するなり、飛びついてくる。

 さすがにそれをかわすわけにはいかないのでシィルはそのまま彼女を受け止める。



「えへへっ、お兄ちゃんだ……」



 マヤがはにかんでくる。



「おいこら、兄ちゃんに迷惑だろ!」

「えーっ、そんなことないよ。ねっ?」



 上目遣いでシィルのことを見つめてくるマヤ。

 さすがにそんな状態では断ることは出来なかった。



「う、うん、迷惑じゃ……」

「はいっ、人の往来ですからそのくらいにしましょうね?」



 シィルの言葉を遮ってシィルとマヤを引き離すリウ。

 するとシィルは小声でお礼を言う。



「それでこんなところまできてどうしたの?」

「あぁ、今日は買い出しだ。お金も貯まってきたし少し奮発しようかなと思ってな」



 ライたちも同じ理由で買い物に来ていたらしい。

 それなら一緒に――と口を出そうとしたが、リウが先に口を出す。



「では私たちも用がありますのでこれで……」

「あ、あぁ、それじゃあ兄ちゃんたち、またな!」



 突然別れを告げるリウ。

 シィルは少し驚きの表情をリウに見せるが、彼女の意識がすでに別の方へと向いていた。

 もしかしたら何か理由があるのかもしれない。

 それなら、ライたちには迷惑をかけるわけにはいかないよね?

 シィルもライたちを手を振って見送る。




◇◇◇




「それで何があったの?」



 シィルはリウに近付いて小声で尋ねてみる。



「いえ、少し怪しい気配を感じたから……」



 そう言いながらリウは大通りに面した路地に視線を移す。

 シィルには特に何も変わったものとかはわからない。



「とりあえず、まだポーションを売ったりとかはしないでくださいね」

「わ、わかったよ……」



 むしろポーションを売った方がただのポーション売りだと思われて狙われないんじゃないのかな? とも思うけど、ここはリウに従っておく。

 彼女なりにシィルのことを思った結果だろうし――。

 それにシィルを狙う人物に心当たりはある。

 いきなり襲われたりはしないだろうけど、リンダというエリーを狙っていた盗賊……。

 彼女ならシィルに近付いてきてもおかしくない。



「……? 兄ちゃんたちどうしたんだ?」



 ケリーが二人ひそひそと話す僕らを不思議に思い聞いてくる。



「い、いや、ちょっと怪し――」

「お兄ちゃん!!」



 ついつい口に出しそうになるとリウが注意してくる。

 慌ててシィルは言い直す。



「いや、怪しまれないようにパーティを開くには……ってケリーには内緒だよ!!」

「パーティ!? いやいや、そこまでしてもらうのは悪いしいいぞ」

「いやいや、しないわけにはいいかないよ……」



 黙っているつもりだったのについついパーティのことを話してしまう。

すると必死になってケリーが断ってくる。



「まぁそれは置いておこうか……。とりあえずギルドの方へ行ってみようか」

「それがいいね」



リウが頷いてくれたのでシィルたちはそちらの方へと向かって行く。




◇◇◇




シィルたちはギルドの中へと入って行った。しかし、リウはまだ怪訝そうな顔をしていた。



「うーん、まだついてくるの」



よくこんなところにまでついてくるよね。

冒険者ギルドなんて盗賊の人がきたら袋叩きにされるのに……。


そこまでしなければいけない理由があるのだろうか?


首をかしげるが何も思いつかなかった。

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