同居人
一人でご飯の準備をしないとと思っているとリエットがローブの少女を連れてきてくれた。
「助かったよ……、一人だと寂しかったから……」
そういうとローブの少女であるリウが少し迷って……、そのあと提案してくる。
「もしよかったらですけど……、この街にいる間、私を置いていただけませんか……?」
それを言ったあと、リウは顔を真っ赤にして「い、今のは忘れてください」と否定していた。
ただそれを聞いたリエットが手をパンと合わせる。
「うん、いいねそれ。シィルくんも一人で寂しかったんでしょ? それならちょうどいいよ」
確かに部屋はたくさんあるけど、知らない人を泊めていいものか……。
シィルは少し迷っていた。
「わ、忘れてください……」
リウは赤い顔をさらに赤くして手を振って否定していた。
「もしかして宿に泊まるお金もない……とか?」
それを聞くとリウは小さく頷いた。
確かに彼女の性格だとろくに人と話せないわけだから働くことも難しいだろう……。
それで持っていたお金が尽きたのなら……。
「わかったよ。部屋ならいくらでも余ってるしここに泊まっていくといいよ」
「ほ、本当にいいのですか?」
リウは目を輝かせながら聞いてくる。
シィルは一度頷く。
「あ、ありがとうございます。こ、このお礼は是非かえさせてもらいますから――」
グッと手を握り気合いを入れるリウを見てシィルは少し苦笑を浮かべた。
◇◇◇
それから数日……。
初めは中々慣れていない様子だったリウも次第にシィルには慣れていき、普通に話してくれるほどにはなった。
それでも依然として外ではろくに会話もできないようだが。
「お兄ちゃん、ご飯できたよー」
交代で作っている朝ごはんの用意ができたみたい。シィルは返事をした後に急いで食堂の方へと向かった。
朝から誰かいる……この広い館に一人じゃないと思うとどこか嬉しい。
そんな気持ちは隠しながらリウと食事をとり、二人で家を出る。
「今日こそはお金を稼いできますね!」
手をグッと握り、気合いを入れるリウ。
ただ、その言葉はすでに毎日聞いていた。
そして、落ち込んで帰ってくるところまでが最近のリウであった。
そんなリウを見送るとシィルも自分の仕事であるポーション売りに取り掛かっていった。
◇◇◇
「シィルくん、リウちゃんとの生活はどう?」
ギルド前までくるとリエットが声をかけてくる。
「色々一生懸命にやってくれてるけどうまくいってない部分あるかな」
「何かあったらいつでも呼んでね」
「うん、わかったよ」
「じゃあ、今日もポーションもらえるかな?」
リエットがお金を出してくる。
シィルはポーションを五本取り出してリエットに渡す。
「うん、いつもありがとう。本当に助かってるよ」
「いえいえ、僕の方こそありがとうございます。ではこれで……」
ギルド前から去っていこうとする。
すると中からマナが出てくる。
「お兄ちゃん、もういくの!? たまにはうちで食べていってよ!」
口を尖らせながら言ってくるマナ。
「うーん、それならたまには食べていこうかな?」
「本当に!? ありがとー!」
迷いながら答えるとマナが嬉しそうにシィルの背中を押して中に入っていく。
◇◇◇
「今日もマナのおすすめでいいかな?」
ウズウズとした様子で聞いてくる。
別に断る理由もなかったのでそのまま頷くとそのまま嬉しそうに厨房へと入っていった。
「おいおい、あんな奴の飯を食って大丈夫なのか?」
近くに座っていたおじさんが青ざめながら聞いてくる。
「大丈夫ですよ。マナも成長してますから……」
「成長……ねぇ。悪いことは言わない。料理長の飯に……いや、なんでもない、忘れてくれ」
おじさんは青ざめた顔をして何処かへ去っていった。
一体どうしたんだろうと後ろを振り向くとそこには怖い顔をしたマナの姿があった。
しかしマナはすぐに笑みに変わると厨房へと帰っていった……。




