第26話 何も努力してこなかった!!
「おめでとうございます。〈白雪花〉のパーティーランク、Dランクに昇格です」
「「「おお~~~!!」」」
ゼラの一件からしばらく経ち。
ついにワタシたちのパーティーが、EランクからDランクに上がった。
冒険者ギルドの受付前。
ワタシとエリシアとゼラは歓声をあげ、今日までの頑張りを労い合う。
「すげえな、お前ら。これからもあくせく働いて、俺を金持ちにしてくれよ」
ポンとワタシの背中を優しく叩いて、やわらかく微笑んで。
エリシアとゼラも同じように褒めて、ワタシたちに背を向け歩き出した。
「レイデン殿! 今日、昇格祝いの飲み会をしようと思うが――」
「いや、俺はいいや。お前らで楽しんでくれ」
そう言って、「んじゃ、また明日」と手を振りながら去ってゆく。
どこか脆い背中を揺らしながら。
「ねえ……最近さ、ちょっとおかしくない?」
「……レイデン、付き合い悪い……」
エリシアとゼラは、心配そうに眉を寄せた。
それについては、ワタシも同感だ。
レイデン殿と知り合ってかれこれ二ヵ月以上経つが、あのひとがお酒の席を断ったことなど一度もない。なのに最近は、決まってこの調子。仕事が終わるとすぐに帰ってしまう。
それだけなら、まだいい。
健康を気遣っているとか、疲れているとか、そういう風に納得できる。
問題なのは――、
「レイデン殿……あっちの方を誘っても断られるし、ちょっと重症かもな……」
あのレイデン殿が……。
あの性欲魔人で、前世はおそらく性豪の男根で、ワタシたちというものがありながら道行く女性に見移りする彼が、最近ワタシたちを求めてこない。
「まさか、誰かと真剣に交際しているとか……?」
「いやぁ、ないでしょ。仮にあの傀儡廻のレイデン・ローゼスに彼女ができたってなったら、絶対どっかの誰かが嗅ぎつけてニュースにするもん!」
エリシアにそう指摘され、ふむふむと納得しつつ、内心安堵する。
確かにあの男が、一人の女性と真摯に向き合うわけがない。……いやまあ、ワタシとは向き合って欲しいのだが。
「……わたしたちに……飽きた、とか……?」
「「――っ!!」」
ゼラの発言に、ワタシとエリシアは目を剥いた。
レイデン殿はどうしようもないほどの生粋のおっぱい狂。
そして我々は、彼の欲求を十二分に満たしている。
飽きられたなどあり得ない……と思う。
だが、確実にないと言い切れない。
「……っ!!」
「ど、どこへ行く、エリシア!」
突然走り出したエリシア。
冒険者ギルドを飛び出したところで、彼女は立ち止まった。
風にたなびく、長い黄金の髪。無意識に【火神の加護】が発動しているのか、パチッと小さな火花が散る。その横顔からは鋭い覇気がにじみ、何か激烈な意思を感じる。
「……あたし、バカだった」
「え?」
「たぶんゼラちゃんの言う通りだよ。おっぱいが大きいからって……そこに、甘えてた。巨乳だから大丈夫だって思ってた。――何も努力してこなかった!!」
歯を食いしばり、叫ぶ。
バチバチと炎が爆ぜ、空気を焦がす。
少し前まで小動物のようだったのに、今の彼女の眼光は猛獣のように勇ましい。
強くなったのだなと、感嘆のため息がこぼれる。
「あたし、行くよ」
ふっと身をひるがえし、ワタシたちに背を向けた。
「――マンネリ解消のヒントを、探しに行く」
その言葉を聞いて、ゼラと顔を見合わせ、合図もなく同時に頷いて。
ワタシたちも、彼女のあとを追った。
……まったく、このワタシがエリシアの背中を追う日が来るとは。
成長したな、本当に。
街を歩くこと、十数分。
「いらっしゃいませー」
ワタシたちは、街一番のアダルトショップを訪れた。
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