表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

第15話 投資詐欺


「あー……えっと、つまりこういうことか? ヴァイオレットが俺とヤりに来たら、そこには既にエリシアがいたと。そしたら、エリシアがヴァイオレットの役目を代わると言い出した。んで、どっちがその役目に相応しいか路上で下着バトルをしていた、と……」

「「……はい……」」


 レイデンさんの家に押し入った、あたしたち。

 あたしとヴァイオレットさんは、床に正座しながらベッドの上のレイデンさんの話を聞く。改めて事の流れを説明されると、我ながらアホ過ぎて顔が熱くなってくる。


「そもそもだが、何でエリシアが俺とヤりたがるんだ? ヴァイオレットはともかく、俺はお前とそんな約束してねえだろ」

 

 この間のお母さんの一件で好きになっちゃいました、とか言えない。


 だってこのひと、絶対に恋愛とか面倒くさがるタイプじゃん!

 そもそも、これだけ優秀なのにこの年齢まで独身な時点で色々お察しだよ!

 

 万が一、ここであたしが告白なんてしようものなら、 


『えー、重い。そういうの、俺いいや。エリシアは帰ってくれ、ヴァイオレットとヤるから』


 ってな展開になるに決まってる!!


 ……勝手に妄想しといて何だけど、めちゃくちゃクズだ。

 何であたし、こんなひとのこと好きなんだろ……。


 い、いやでも、いいところはあるの!

 本当に悔しいけど、いいところはあるの!


 だからあたし、どうしてもレイデンさんのことが欲しいの!!


「レイデンさんとそういうことした次の日、ヴァイオレットさんってば、すごく機嫌がいいからさ! そういうことなら、あたしも経験してみたいなーって! そう、思って……!」


 このひとをものにするには、言葉を用いたってダメだ。


 あたしの身体でメロメロにする!!

 それしかない!!


 だからあたしは、今日ここに来た。

 娼館のチェルシーさんに搾られる前に、あたしが搾り切ってやろうと思ってやって来た。


「そ、そんな私情まみれな理由で、ワタシの役目を取って代ろうというのか!? ダメだダメだ! そんなのはダメだ!」


 焦ったように、ヴァイオレットさんが口を挟む。


 ……あたしは気づいている。

 このひとも、レイデンさんのことが好きだ。


 何でわかるかって、これは理屈じゃない。

 女の勘が、そう囁く。


 今日あたしがここへ来たのだって、半分はこのひとを阻止するためだ。

 あたしと気持ちが同じなら、絶対にチェルシーさんに嫉妬する。自分以外の女にとられまいと、確実に行動を起こす。


 そして、案の定やって来た。

 今は、あたしを排除しようと躍起になっている。

 

「レイデン殿、よく考えろ! ワタシの方が、あなたのことを熟知している! 夜のお供にはぴったりなはずだ!」

「で、でもあたし、ヴァイオレットさんより色々触り心地いいと思うよ! な、何でもするしっ!」

「何でも? 何をすればいいかの知識もないのに、下手なことを言うものじゃないぞ」

「知識はあるよ! これでも……そ、そういう小説とかで、勉強してるもん……!」

「なるほど、あの下着は創作物の影響というわけか。勉強熱心なのはいいが、重要なのは実践経験! それに関してはワタシは――」


「二人とも、ちょっと黙れ」


 身体の芯にまで響くような、レンデンさんの低い声。

 あたしたちは揃って閉口し、彼を見上げた。Sランク冒険者らしい堂々とした空気に、ゴクリと息を飲む。


「据え膳食わぬは男の恥――……俺の、好きな言葉だ」


 何を言っているかいまいちわからないが、無駄にキメ顔でカッコいいなと思った。


「大勢で食う飯は美味い」


 言いながら、上着を脱ぐ。


「セックスだって、大勢でヤる方が楽しい。――男は、俺しかいらないけど」


 思い切り下を脱ぎ、全裸になった。

 一糸纏わぬキメ顔の中年男性が、何の恥じらいも感じさせない立ち姿を披露する。


「さあ、3Pだ!! Sカップダブル盛りだぁああああ!!」

「やるわけないだろうが、バカたれがぁ!!」


 雄叫びをあげたレイデンさんの顔を、ヴァイオレットさんがすかさず殴り飛ばした。

 ベッドへ吹き飛んだ彼は、顔をおさえて悶絶する。


「な、何が3Pだ!! ワタシたちは、どちらかを選べと言っているんだ!! そうだろ、エリシア!?」

「えっ? ……あ、うん! そうだよ、どっちか選んで!!」

「ワタシかエリシアか、二つに一つだ!! さあ、選べ!!」

「選んでよ、レイデンさん!!」


 ベッドの上でうずくまっていたレイデンさんは、あたしたちを一瞥してため息をついた。

 ボリボリと頭を掻いて、そのまま身体を丸める。いじけた子どものように。


「……選ぶとか無理だって、俺。どっちもすげー可愛いもん……」

「そ、そんな褒められても、3Pはしな――」

「うん、だからもういいかな。明日、チェルシーちゃん予約してるし……」


 その一言に、ブチッとあたしの頭の中で切れちゃいけないものが切れた。


 ヴァイオレットさんも気持ちは同じなようで、お互いに歪な笑顔を見せ合う。冷たい無言の中、二人の意見が合致する。


「……レイデン殿の気持ちはよくわかった。よし、3Pをしよう」

「えっ、マジで!?」


 うずくまっていじけていたレイデンさんは、ヴァイオレットさんの言葉に振り返った。

 しかし、あたしたちの表情を見るなり、その額には冷や汗が浮かぶ。


「な、何か二人とも、顔怖くない……で、ですか……?」

「ん? 何も怖くないぞ? なぁ、エリシア」

「そうだね。これからえっちなことをしようってのに、怖いわけないじゃん」


 コートを脱ぎ去るヴァイオレットさん。

 あたしも倣って、服を脱いで床へ放った。


「いやいや、目が笑ってないって! 怖いって!」

「レイデン殿は何も心配しなくていい。――ただ、今夜でそのちんぽには機能不全になってもらう」

「あたしたち以外じゃ反応しないよう、教育してあげなくちゃね」


 ギッ――。

 あたしたちがベッドに上がると、レイデンさんは小さな悲鳴を漏らした。


「や、やっぱり俺、今日はやめ――」

「レイデン殿!!」

「は、はい!!」


 レイデンさんの股間を思い切り掴み、ヴァイオレットさんは凄まじい剣幕で迫った。


「女の前にちんぽを出したんだろ!! だったら、命くらい懸けろよ!!」


 何を言っているのかまるで意味がわからないが、今までに見たどんなものよりも迫力があった。


 重苦しい沈黙。


 ゴクリと唾を飲んだレイデンさんは、何かを悟ったように全身から無駄な力を抜く。ゆっくりと瞬きをして、両の瞳に真剣な炎を灯す。


 戦いに臨む戦士のような顔つきで、ふんと爽やかに鼻を鳴らした。股間を握られたまま。


「……そうだよな。ただの3Pじゃない、Sカップとの3P。それくらいの覚悟はいるよな……」

 

 過去一で凛々しい表情を作り、あたしたちを交互に見た。


「安いもんだ、ちんぽの一本くらい……お前らと、3Pできるなら……!!」




 ◆




「……んで、一晩どころか今日の昼間までこってり搾られたのかい」

「こひゅー……」

「息も絶え絶えで立ち上がれもしないのに、全裸で街を這ってアタシに会いに来たと」

「こひゅー……」

「500年以上生きてるけど、アンタほどのバカは見たことがないよ。人間って種の品格の平均を下げるのも大概にしな。アンタは歴史の汚点だよ」

「こ、こひゅー……」


 久々に会ったのに、相変わらず惜しげもなく俺を貶すチェルシーちゃん。


 ヴァイオレットの性欲が凄まじいのは知っていたが、エリシアも化け物クラスだった。おかげで俺は、骨の髄まで搾り取られカラカラ。もはや唾液も出ないが……でも予約しちゃったし、バックれたら嫌われちゃうし、Sランク冒険者の意地でチェルシーちゃんに会いに来た。


「ほら、水でも飲みな。アンタ、ミイラみたいになってるよ」

「こひゅー……」

「口移しで飲ませてだって? 500万ゴールド払いな、そしたら考えてやってもいい」

「こ、こひゅー……」

「払う!? アンタ、今そんなに羽振りいいのかい!? ……よし、今考えたけど却下だね。もう一回考えるから500万ゴールド払いな」


 もう500万ゴールド払う約束をして、口移しで飲ませてもらった。ふぅー、生き返ったぜ。


「そうなんだよ。俺、今結構お金あってさ。これからは、前みたいに通うからね」

「そりゃいいが……結構って、具体的にどれくらい?」

「350億ゴールド」

「さ、350億!? 350億って……えっ、えぇ!? そりゃ本当かい!?」

 

 あー、気持ちぇー!!

 乳のデカい良い女に稼ぎを自慢するのって、最高に気持ちぇ〜〜〜!!


 そうそう、その顔。

 その顔が見たかったんだよぉー! 這ってでも来てよかったー!


「本当さ。俺を誰だと思ってる? Sランク冒険者だぜ?」

「その気持ち悪いドヤ顔やめな。豚のケツにぶち込みたくなる」

「ごめんなさい」


 怒られた。

 悲しい……。


「でも、最初は500億って話だったんだよ。それが色々あって350億になっちゃって……ギャンブルで増やそうかな?」

「やめな。アンタにギャンブルの才能ないだろ」

「んー……まあ、確かに……」


 ため息をつく俺の隣で、チェルシーちゃんはハッと何か閃いたような顔をした。ニヤニヤと、やけにおかしそうに笑う。


「どうしたの、チェルシーちゃん? 何か面白いことあった?」

「え? あ、あぁ! 何でもないっ、何でもないよ!」


 焦り気味に誤魔化して、コホンと咳払い。

 途端に蠱惑的な表情を浮かべ、俺の腕に抱きつく。おっぱいが、これでもかってくらい当たっている。


「ねえ……アタシさ、絶対に儲かる投資話を知ってるんだけど、アンタもどうだい?」

「絶対に儲かる……投資……?」

「そう! アタシに350億預けてくれたら、500億どころか1000億だって夢じゃない! アタシは手数料として、儲けの10%をもらえたらそれで十分さ! ……どうだい、美味しい話だろ?」

「んー……別に疑ってるわけじゃないけど、俺、投資とかそういうのは別に――」

「おっぱいで挟むやつ、やってあげようかい?」

「わかった! お金、全部チェルシーちゃんに預けちゃう!」


 おっぱいには勝てないよな。

 男の子だもん。


「面白い」「続きが読みたい」と思った方は、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ