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想いよ届け14

 どうにか制服に着替えてもらったが、これはこれで目を引くらしい。

 すれ違う男子も女子も成宮を視界に捉えるとほぼほぼ振り返る。近すぎるせいで忘れていたが、やはり容姿は群を抜いているらしい。


 文化祭デートとはいえ、どこを巡るかなんて予定は立てていない。

 目に入ったものを楽しもうとまずはお化け屋敷に入ってみたのだが。


「……怖い」


 古典的で作りの甘いお化け屋敷にもかかわらず成宮はぎゅっと俺の腕を掴んで離さない。

 柔らかな二つのふくらみが、腕に押し付けられて役得だがそれを楽しむわけにはいかない。


 ここは男らしく、どんと構えて好感度アップだ。


「大丈夫、俺がついてる」

「頼もしい」


 よりすり寄ってくる成宮にデレデレと鼻を伸ばす。

 その後、出てくるお化けの演技力がすさまじかったのは気のせいであろう。


 お化け屋敷を出て昼時。とりあえず焼きそばやらたこ焼きやらを買い込みベンチに座ると人目もあるのに成宮がはしで掴んだたこ焼きを口元に運んできた。


「あーん」

「あむ。美味い」

「えへへ」


 完全にバカップルである。周りの男子からはリア充爆発しろ。的な視線が飛んでくるが気にしない。文化祭の準備期間が終わったのだ、好きなだけいちゃつかせてもらう。


 互いに食べさせ合い、お腹も満たされたところで自然に手を繋ぐ。


「幸せ」

「俺もだ」

「和也と恋人になれて良かった」


 成宮は瞳を輝かせて、俺を見ている。

 指が絡み合い、俗にいう恋人繋ぎに。


 ただ、見つめ合っているだけで時間が過ぎていった。


 文化祭二日目も順調に進み、生徒たちは後夜祭を楽しんでいる。

 俺と成宮は屋上からその様子を見ていた。


「はじめて甘やかされたのは、ここだったな」

「うん。お弁当美味しそうに食べてた」

「実際美味かったからな。なんか、すっげえ昔な気がする」

「私も」


 出会って四か月だが、色んな思い出があった。

 一言では語りつくせない、不思議な時間を共に過ごした。


 毎日一緒にご飯を食べて、話す時間が増えて。

 成宮のことを見る時間が増えて、気づけば目で追っていて。

 その横顔を見るだけで幸せになって、秘めていた想いを打ち明けて。


 ――かけがえのない存在に、恋人として結ばれた。


「好きだ、遥。ずっとずっと、大好きだ」

「私も。和也とこの先もずっと。二人で一緒なら、なんだって乗り越えられる」


 瞳をそらさずに、一歩一歩と距離を縮めて。

 誰にも邪魔できない、強い絆で結ばれた。


 二人で強くなる。

 二人で変わっていく。


 大好きな彼女と、共に。


「「愛して、ます」」


 熱く溶けるような。

 長い、長い。

 口づけをした。

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