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成宮遥は甘やかし3

 じっと純粋な目で見つめてくる成宮に、なにも言えずに固まるばかり。

 連絡先を交換するのはまだいいが、なぜクラスメイトの前なんだ。


 辰真に助けを求めるが、すでにどこかに逃亡したらしい。あいつ、覚えとけよ。

 クラスメイトもまた、俺の返答待ちと言った様子で誰も介入してこない。


「ダメ?」

「ダメじゃ、ないが」


 周りなど気にそぶりも見せず、成宮はスマホを突き出してくる。連絡先を交換することは別にいいが、相手が俺なのが問題だ。男に興味がない成宮が不良に連絡先を教えるなど確実に脅されていると勘違いされる。


 そうなると面倒くさい、学内には三日で噂が広がる。

 元から学校などに興味はないが、貴重な昼寝スポットを奪われるのは避けたい。


 どうしたものか、選択肢は二つ。

 成宮との関係を勘違いされるのを了承して連絡先を交換する。

 学内の噂になることを覚悟して思い切って断る。


 どちらにせよ、終わりな気がした。


「スマホ、だして」

「別に、連絡先交換しなくてもよくないか? 学校で会えるだろ」

「ダメ。学校外でもお世話しなきゃ」


 瞬間、クラス中がざわつく。男子からは嫉妬、女子からは軽蔑の視線。

 勘違いは成宮の中だけにしてほしい、クラスメイトまで巻き込むな。


 おいおい、とんでもない爆弾を投下してくれたな?


「ちょっと来い」


 いてもたってもいられず、成宮の手を引いて教室を出た。


 再び屋上に戻る、ここなら誰も来ないだろう。

 成宮はぽかんとした様子で俺を見て、危機感のない発言をする。


「二人きりになりたかったの?」

「ちげぇよ」

「じゃあ、膝枕?」

「もっと違うわ。……連絡先は交換してやる。だから、人目のあるところで俺に絡むな」

「わかった。つまり、人前じゃなければいいってこと?」

「なんでそうなる」


 解釈の仕方がおかしくないか? 曲解どころか、都合のいい自己解釈だ。

 スマホを取り出しMINEを交換、妹と両親、辰真しかいなかった連絡先に成宮が追加された。


「言っておくが、俺はろくに返事とかしないからな」

「わかった。じゃあ、一方的に送る」

「そういうことじゃないんだよ……」


 マイペース過ぎる成宮の言動に会話というやりとりの意味があるのか謎である。

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。屋上で寝たいところだが、成宮が付属してくるのは言うまでもなさそうだ。


 はあ、こんなことを言う日が来るとは思っていなかった。


「教室、戻るぞ」

「うん。ねえ」

「なんだよ」

「放課後、夕飯作りに行ってもいい?」


 ホワッツ?

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