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想いよ届け13

 文化祭当日。順調にカフェは運営され、大盛況を迎えている。

 他のクラスにはない大行列。理由は単純、メイド服姿の成宮を目当てにした客が押し寄せているという形だ。流石は学校一の美少女、もはや観光地のような賑わいである。


 しかしながら、彼氏としては成宮の可愛らしい姿を他の男に見せるのは腑に落ちないわけで。顔が怖いという理由で厨房に回されている今、様子はクラスメイトの会話からしか読み取れない。


「成宮さんの笑顔で接客されたら、誰でも落ちちゃうよねー」


 ケーキを取りに来た女子の言葉に、思わず拳を握りしめる。

 俺の彼女を変な目で見てるんじゃないだろうなあ……?


 心ここにあらず、意識は完全に成宮を心配していて作業がおぼつかない。


「おいおい、顔怖くなってんぞ」


 歯を食いしばっていると、後方から肩を叩かれた。

 はっと我に返るとケーキを取りに来た気弱そうな女子が震えあがっていた。


「わ、悪い」


 誤ったが、女子は肩を震わせながらケーキを運んで行った。

 いけない、今はこちらに集中せねば。だが、彼女が気になって頭から離れない。


 その様子に呆れているのか、辰真は大きなため息を吐いていた。


「成宮が気になるのはわかるけど、よ。お前が彼氏なのは学校中の噂なんだ。誰も手なんて出さねえよ」

「わかってるが、エロい目で見られるのは虫の居所が悪い」

「ははは、美人な彼女を持つと大変だな。さて、俺はそろそろ休憩なんでね。美雪ちゃんとデートしてくるわ」

「あ、ずりぃ」


 振り向くと辰真は上着を脱いで教室を出て行った。

 俺と成宮のシフトが終わるまであと一時間ほど。とにかく耐えるしかなかった。


 ようやくシフトが終わり、待ちに待った成宮とのデート時間。

 上着を脱ぎ、シャツ姿で待っていると向こうからメイド姿のままの成宮がやって来た。


「お待たせしました。ご主人様」


 スカートの裾をつまみ、軽く会釈する成宮。周囲の男子は鼻の下を伸ばして見ていたので睨むとそそくさと逃げ去って行った。


「そ、そのまま行くのか?」

「うん。だめ?」

「ダメじゃ、ないけど……」


 普段から視線を集めているのに、この姿のまま連れまわしたら完全に注目の的だ。

 俺は落ち着いてデートしたいのだ。


 頭をがしがしとかく。仕方ない、一回着替えてもらおう。人気の少ない校舎裏に成宮を連れ、説得することにした。


「メイド服は嬉しいけど、着替えてくれ」

「ここで? もう、エッチ」

「そ、そんなわけないだろ」

「ふふふ、からかってみた。うん、ご主人様の頼みなら仕方ない」


 成宮はおかしそうに笑うと、一歩一歩と俺に近づき。

 耳元で囁く。


「ご主人様、大好きです」


 数秒のキス。

 二回目のキス。


 いつもと服装が違うだけなのに、心臓が飛び出そうになるくらいドキリとした。

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