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想いよ届け12

 初めてのキスをした誕生日を終えて、文化祭の十日は本格化し始める。

 連日遅くまで残り、教室をカフェ使用に変えていく。


 クラスメイト達は手伝ってくれるが当然、甘々な時間は減るわけで。

 家に帰っても夕飯を食べて寝るという日々が続いている。


 互いに甘えたい、甘えられたいという気持ちはあるが、皆の前でするわけにもいかない。

 文化祭後にしようという約束だが、実際いちゃいちゃが爆発しそうだ。


 開催が二日後に迫った今日、辰真を含む数人のクラスメイトの助力の下、最終調整に入っていた。


「これって手配できてるんだっけ?」

「確認してない」

「おけ、聞いてくる」


 カフェと言っても調理許可が簡単に降りるわけではないので、出来上がっている食べ物を提供するといった形だ。そういうわけでケーキやら菓子やらの発注確認が多い。


 細かいところは成宮がやってくれているが、力仕事や大まかなところまでは手が回っていないので俺がやっている。


 職員室で担任に確認すると手配は済んでいるらしい。


「国分、お前変わったな」

「そっすか?」

「ああ、凄く真面目になった。先生としては嬉しいよ」


 腕を組み鼻高々と言った様子の担任に頭を下げ、職員室を後にする。

 確かに、変わったと言えば変わっただろう。服装や髪色は変わっていないが、成宮と出会って性格も態度も大きく変わった。


 全部いい方向に向いているのは、彼女のおかげだろう。


 プリントを抱えたまま教室に戻ると成宮と辰真以外のクラスメイトの姿がない。


「あれ、皆は?」

「ああ、もう遅いから帰らせた」

「辰真は?」

「俺もそろそろ迎えが来る」


 迎え? と顎に手を当てると聞きなれた声と共に教室に誰かが入ってきた。


「やっほー」

「え、美雪?」

「ういっす。彼氏を迎えに来たよ」

「彼氏? ああ、辰真か」

「うん。さ、帰るよ、たっくん」


 さらっと現れた美雪は辰真の手を引く。

 辰真は照れながらも応じると、俺と成宮に手を振った。


「お前らも遅くならないうちに帰れよ」

「兄貴と成宮さん、気を付けてね」


 美雪は辰真の腕に絡みついてとびきりの笑顔を見せている。

 あいつ、あんな風に笑うんだな。


 二人、教室に残される。

 まだ成宮は書類やらの確認をしているようですぐに帰る様子はなさそうだ。


「なにすればいい?」

「ん、こっち確認お願い」


 いくつかの書類を渡され、目を通し始める。

 色々、確認やら申請が必要なんだな。売上とかも、そうだよなぁ。


 成宮はなにやら電卓を打ちながらてきぱきと書類を片付けている。

 やっぱ、頭がいいって違う。書類を見返し始めると成宮が息を大きく吐いてもたれかかってきた。


「疲れた」

「お疲れさん」

「癒して」

「といわれても」

「むぎゅってして」

「はいはい」


 後ろから抱きかかえる形で成宮に腕を回しながら書類を確認する。

 成宮もまた、確認の続きを始めている。


 なんだか、幸せな時間だ。

 明後日の文化祭も一緒に過ごせるだろうか?

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