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想いよ届け11

 文化祭が二週間後に迫る土曜日のこと。

 起きるともう成宮が来ていて笑顔で俺の頬を突いていた。


 朝から幸せだなー、と思いつつ今日が俺の誕生日であることを思い出す。

 なるほど、成宮が嬉しそうにしているのはそのせいか。


 欠伸をしながら起き上がると二の腕におっぱいを押し付けられた。

 ふにふに、と柔らかな感触が伝わる。


「一緒に行く」


 でれっとした表情で頬をすり寄せてくる彼女。

 甘やかす、と言うより完全に甘えられている。


 洗面所に行くだけなのに、まったく。

 今日は一ミリも離れないということなのだろうか? 嬉しいような恥ずかしいような。


 朝の身支度を済ませリビングに向かうと成宮はぐいぐいと俺の手を引いてソファに座らせる。


「今日は和也の誕生日。プレゼントは、私」

「え」

「嬉しくない?」

「う、嬉しいけど」

「けど?」

「受け取ってどうすれば?」

「えへへ、えっと、ね」


 成宮はそっと顔を近づけると耳元で色っぽくささやく。


「和也の言うこと、なんでも聞く」

「ま、まじ?」

「まじです。……エッチなことだって、いい」


 悪戯っぽく口角を上げ、唇に指を当て成宮は首をかしげる。

 エッチなことって、まだキスもしてないのに早すぎませんか? ごくりと生唾を飲み込み、ピンク色の妄想をかき消した。


 プレゼントと言えば、成宮に渡しそびれていたキーホルダー。

 今渡すのもおかしいかな、と思いつつもいつか渡そうとポケットに忍ばせていたことを思い出す。


「はい、これ」

「なに?」

「誕生日の時、渡すの忘れてた」


 紙袋を受け取った成宮はキーホルダーを取り出すと驚いたように目を丸くする。


「これ、私が見てた」

「おう。喜んでくれるかなって」

「どっちの誕生日か、わからない。でも、ありがと。だーいすき」


 ぎゅーっと俺を抱きしめる。

 伝わる成宮のいい香りと温もり。


 抱きしめ返すと安心したのか、成宮は完全に体を預けてくる。

 幸せな重みだ。彼女を感じられる、幸福の時間。


 いつか、そういう行為もしてしまうのだろうか?

 成宮とならいいと思う。愛を感じられる、気がするから。


 成宮は体を離すととろんとした表情で俺を見つめていた。


「ねえ、いい、よね?」


 唇に指を当て成宮はそっと目を閉じる。

 キス、するのは初めてだ。よくオレンジの味とか言うが、どうなのだろう?


 成宮の肩に手を置き、顔を近づける。

 彼女の息遣いも、心の音も聞こえそうな距離。


 まつげ、長いな。


 もう、何度していたっておかしくないような関係性を続けてきたのに。

 ようやく俺たちは。


 初めて唇を重ねた。

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