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想いよ届け10

 実行委員に選ばれ仕方なく全体会議に参加した帰り道。

 相変わらず成宮は恥ずかしそうにしていて話してくれない。


 なにか話題を、と考えてみるが思いつくのは文化祭で何をするかくらいだった。


「文化祭、なにしたい?」

「えっと、カフェ、とか?」

「カフェ、か」


 ぶつ切りの会話。避けられているというよりは、変に意識されている気がした。

 きちんと成宮と話す必要がある気がする。


 家に帰ると珍しく制服のまま成宮がソファに座り込んだ。

 隣に座るともじもじした様子で成宮が顔を背けてしまう。


「遥」

「な、に?」

「なんで俺の顔見てくれないんだ?」

「それは……」

「俺は遥の顔、もっと見たい」


 少し無理やりかもしれないが成宮の両頬に手を当てこちらに振り向かせる。

 頬は微かに熱を帯びていて薄桃に染まっている。


「やっぱり可愛い顔してる。なあ、どうしたんだ? 俺をもっと甘やかすんじゃなかったのか?」

「だ、だって」

「だって?」

「恋人だって意識したら、和也が凄いかっこよくて。声も顔も仕草も愛おしくて。今までみたく甘やかせなくなって」


 手を離すと成宮はぶつぶつと俺を褒めはじめる。

 とんでもなく気恥ずかしく頬をかく。素直に言われすぎて調子が狂う。


「な、なんか凄く褒められてる」

「当然。和也は世界一かっこいい」

「お、おう。……遥も世界一可愛い」

「ほんと?」

「ほんと」


 微かに目線をそらしながら言うと成宮は俺の首に手を回し、耳元で囁いた。


「大好き」


 思わず、頭がくらっとした。我が彼女ながら俺を殺しに来てるんじゃないかと思う。

 成宮はそのまま俺の胸に顔を預けると頬ずりし始める。


 さっきまでデレてこなかったのに、理由を聞いたら吹っ切れたのだろうか?

 それとも可愛いと言われて上機嫌なのか? 真相はわからないが、押し付けられるおっぱいの感触が柔らかいことだけはわかった。


 翌日。どうやら一線を越えたらしい成宮は朝から俺の腕に絡みついて離れようとしない。

 登校中も教室に入ってもそれは続いていて、男子の嫉妬の視線が痛かった。


 一時限目のLHRでクラスの意見を聞いたところ、文化祭はカフェをすることになった。

 男女ともカフェらしい格好でやろうとのことで実行委員として近くの服飾店に衣装を見に来たのだが、カフェらしい格好ってなんだ。


 ぼうっと店内を見渡していると、いつの間に試着室に入っていたらしい成宮がカーテンの隙間から俺を呼ぶ。


「どした?」

「見て、じゃーん」


 カーテンが勢いよく開かれるとそこに立っていたのはメイド姿の成宮だった。

 長身でスタイルのいい彼女が着ると実に絵になっている。形よく出た胸が、引き締まったウエストが、ミニスカートから覗く生足が俺を魅了してくる。


「どう?」

「可愛すぎます。写真撮ってもいいですか?」

「んー、ぎゅってしてくれるなら」

「勿論」


 そこからはもう、撮影会だった。

 カフェには関係のないような衣装も試着して。気づけば俺の画像フォルダは成宮一色になっていた。

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