想いよ届け8
盛り上がるわけではないが、楽しくゆったりと流れていく二人の時間。
お寿司をつまみ、何気ない会話を楽しみ時間は過ぎていく。
出会ってから半年も経っていないというのに、こんなに落ち着いてしまうのはなぜだろう。成宮との相性がいいからだろうか?
会話はだんだんと思い出話に花を咲かせはじめる。
「あの時、和也が助けてくれなかったら出会ってなかった」
「そう、だな」
「連れ去られた時も助けてくれた。和也には助けられてばかり」
「そんなことない。俺も遥に助けられてる」
「ほんと?」
「ああ。言わないだけで感謝してる」
「嬉しい」
柔らかく微笑む成宮に、思わず胸が高鳴る。
好きな子が微笑んでくれるだけで幸せだなんて思う時が来るなんて考えもしなかった。
不意に、成宮は俺をぎゅっと抱き寄せる。
まるで、愛おしいものを離さないように。
何度目のおっぱいの感触だろう。あれだけ恥ずかしかったはずなのに、今ではもうこの感触も落ち着いてしまう。決して手で触れているわけではないが、やはりおっぱいは男を魅了してやまない宝石だ。
「ねえ」
「ん?」
「私、きっと。出会ってすぐの頃から和也に惹かれていたのかもしれない」
「え?」
「自分にはない、色んなものを持っている和也に。この人なら自分を変えてくれるって、本能的に思っていたのかもしれない。あの、ね。もっと和也を甘やかしたい。もっと甘やかすには、どうしたらいい?」
「そ、それは……」
おっぱいから解放され成宮を見ると頬を赤く染めていた。
きゅっと両手を胸の前で握り、なにかを待つようにじっと俺を見つめてくる。
「言って」
「いい、のか?」
「うん」
心の中に秘め続けていた、成宮への想い。
一緒にいて安心して、もっとそばにいたくて。
いつの日からか、自分にはない特別を持っている彼女に惹かれていたのは同じ。
支えて支えられて、お互いにかけがえのない存在に。
ここで言うべきことは、もう一つしかない。
今日言うなんて考えもしていなかったけど、ずっと見計らっていたタイミングはここだった。
成宮遥という、一人の女の子を愛し続けられるように。
きちんと伝えよう。
「遥」
「はい」
「これ、もっと早く渡そうと思ってたんだけど」
ずっとポケットに隠していた合鍵を手渡す。
「え、これ」
「毎回鍵開けるのも面倒だから、な」
「いい、の?」
「おう、当たり前だ」
「ありがとう」
「俺はバカだからさ、これからも遥のことしか考えないし。遥が喜んでくれることだけをしていきたい。だ、だからさ……」
「ふふ、落ち着いて」
「お、落ち着いてるっての」
「そう、緊張してるよ? もう一回ぎゅってする?」
悪戯っぽく笑う成宮だが、ここで流されてはいけない。
なにを焦ってるんだ。男らしく、ただ一言伝えればいいじゃないか。
深く息を吸って、吐き出した。
「好きだ。恋人になってくれ」
「はい、お願いします」
成宮は満面の笑顔で、笑いかけてくれた。




