想いよ届け7
翌日。軽度だったこともあり、風邪の症状はほとんどなくなっている。
朝、成宮から今日は安静にしてやめておこう、とメッセージが来ていたが断った。
たいして不調でもないのに寝込む必要はない。むしろ動いていた方が気楽である。
それに、今日は成宮の誕生日。是が非でも祝ってやりたい。というわけで朝から成宮と二人、近くのケーキ屋にケーキを買いに来ていた。
「遥はなにが好きなんだ?」
「苺タルト」
「じゃあ、苺タルトにするか」
店員さんに目当てのケーキを頼み、箱詰めしてもらう。
会計を待っているともう一人の店員さんがにこにこと笑顔を浮かべながら話しかけてきた。
「あの、すいません。もしかしてカップルさんですか? 実は今、カップルさんにクッキーをプレゼントしてまして。よければどうぞ!」
「え、えっと。ありがとうございます」
押し切られる形で渡されたクッキー。やはり、他人から見たら俺たちはカップルに見えるのだろうか? なんとなく気恥ずかしくて頬をかくと隣に立つ成宮もケーキを受け取りながらどことなく恥ずかしそうにしていた。
並んで歩く帰り道、付かず離れずの距離を成宮は歩いている。
今はまだ、恋人ではないが互いに心惹かれている相手。告白すれば受け入れてもらえるだろが、いまいちタイミングがつかめていない。
今更、なんていえばいいんだろう。好きとは伝えているし、くさい台詞も言えない。
ぼうっと考えていると成宮がくい、と袖を引く。
「ねえ」
「なんだ?」
「私たち、カップルに見えるんだ、よね」
「そ、そうらしいな」
「……そっか」
どこか照れた様子で顔を俯かせる成宮。今、成宮に告白したらなんて返すのだろう?
意識している、ということなんだろうか? なんだか、気恥ずかしい。
恋人、か。恋人になったら、俺達の関係性はどうなってしまうんだろうか?
今より甘々に? 一秒の隙もなく成宮に甘やかされる? 果たして俺の身が持つだろうか?
映画やドラマでしか見たことのない関係性。友人にも恋人がいる奴はいないし、考えれば考えるだけ深みにはまっていく気がした。
アパートに着き、部屋に戻る。
誕生日ということもあり、デリバリーでお寿司を頼んでいたがタイミングよく持ってきてくれたようだ。
桶に盛られた寿司と、冷蔵庫に残っていたジュースを食卓に並べ静かな誕生日会が幕を開けた。




