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想いよ届け6

 どうにか家まで帰り、着替えを済ませるとベッドに横になるよう言われたのでおとなしく指示に従う。熱を測ってみると見事に38度を超えていて、鼻水も出てくるようになった。


 幸い熱が辛いだけでのどの痛みや咳はそこまでひどくない。安静にしていてればすぐに治るだろう。


 最近、色々頑張りすぎたか。天井をぼうっと見つめていると、近くのコンビニでなにかを買って来たらしい成宮がベッドの横に膝をついた。


「飲んで」

「すまん」

「ううん。なにか食べられそうなもの作るね」


 渡されたスポーツ飲料を一口含む。なるべく迷惑をかけないようにしてきたのに大誤算である。少しは頼れる男になりたいのに。


 ベッドで横になって安静にしているとキッチンの方から調理の音が聞こえてくる。

 前は風邪ひいても一人だったが、誰かがいてくれるって心強い。


 しばらく待っていると調理を終えたのか、成宮がお皿を持ってやって来た。


「おかゆ、食べられそう?」

「ああ」

「よかった。はい、あーん」

「いや、一人で……」

「だめ。あーん」


 押し付けられるようにして成宮がフーフーと冷ましたおかゆを口元に運んでくる。

 一人でも食べられるんだが、まあいいか。いつも甘やかされてるし、今更どうということもない。差し出されたおかゆを一口、食す。


「美味い」

「食べたらしっかり寝る」

「はい」


 まるで母親のように、成宮は偉くまじめな顔をしておかゆを食べさせてくれた。


 食べ終えた頃には眠くなっていたのか、気づくと眠りに落ちていた。外は薄暗く、ずいぶんと寝ていたらしい。体をほぐすように起き上がると寝る前よりは楽なっていた気がした。


「起きた?」

「おう、迷惑かけた」

「気にしないで。こういう時はお互い様」


 ふふっ、と微笑んだ成宮は読みかけの本に栞を挟むとベッドまでやって来てベッドに腰掛ける。


「無理しちゃ、だめ」

「してない」

「嘘。和也、無理してる」

「……ばれてたか」

「うん。私に気を使いすぎ、もっと楽にして」


 ぽんぽん、と俺の頭を撫でる成宮は、柔らかく笑いかけてくれる。

 少し、心が楽になった気がした。


「ありがと、な」

「どういたしまして。今日はいっぱい甘やかすから、覚悟して」

「まじか」

「まじ」


 悪戯っぽく微笑む成宮だが、撫でる手は変わらず優しい。


 出会って三か月、短いようで濃い時間の中で俺はどんどん成宮に惹かれている。

 その人柄に、その感性に。俺にはないものをたくさん持っている女の子。


 気を楽に、気の置けない相手に。ずっと、隣にいてほしい相手。

 やっぱり、成宮のこと好きだな。

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