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想いよ届け4

 楽しい時間は過ぎるのが早い、とはまさにそうだと思った。

 この時間で成宮は辰真と美雪と打ち解けたのか、自然と笑うようになっている。


 俺意外には上手く話せていなかったり距離があったりしたから、打ち解けられてよかった。しかし、夏休みと言えど、遅くまで盛り上がるのは近隣にも迷惑だと、誕生日会は賑わいを見せたままお開きとなった。


「美雪ちゃんは俺が送ってくから安心しろ」

「辰真君、よろしくー」


 美雪は辰真が送って言ってくれるらしい。まあ、送り狼になるような奴でもないし、預けても大丈夫だろう。それにしても、あの二人随分と仲良くなったらしい。家を出ていくときも笑いながら会話を弾ませていた。


 誕生日会の後片づけを済ませると、成宮は少し寂しそうにベランダの手すりにもたれて外を見ていた。


「どうした?」

「ん、あっという間だった」


 眉をひそめながら、成宮は微笑む。

 誕生日は来週だが、いい思い出になったんじゃないかと思う。


「当日は二人で、祝おう」

「え?」

「ほら、誕生日の日誰にも邪魔されたくないから、さ」

「もう」


 照れながら頬をかくと成宮はおかしそうに笑う。

 見上げる夜空には無数の星々が輝いていて、一筋の流星が流れていく。


「お、流れ星だ」

「なにかお祈りした?」

「いや? それに、祈らなくても、もう叶ってる」

「叶ってる?」

「ああ」


 不思議そうに首をかしげる成宮だが、願いは恥ずかしくて言えない。

 前までは一匹狼の不良だったのに、今はもう、見る影もない。


 ただ、好きな人の隣にいたいというどこにでもいる少年だ。


 だから、願いはそう。

 成宮の傍で一緒に笑っていたい、と願うだけだ。


「中、戻ろう」

「うん」


 夏とはいえ、夜は少し冷える。

 部屋に戻り、定位置となったソファに座ると成宮がポンポンと太ももを叩いた。


「膝枕、してあげる」


 柔らかに頬を緩ませ、俺を誘う。

 思えば出会った時も膝枕しようとしてったっけ。あの時は断ったが、今更断理由もない。


 誘われるまま頭を預けると成宮は優しく頭を撫で始めた。


「サプライズ、驚いた」

「ああ、楽しかっただろ?」

「とても。色々、話せてよかった」


 豊かな双丘の向こうで、成宮は嬉しそうに顔をほころばせている。

 その笑顔は相変わらず可愛らしくて、愛おしい。


「なあ」

「なに?」

「こうやって甘やかされるのも悪くないな」

「ふふ、和也っぽくない台詞」

「そうか?」

「そうだよ」


 二人、声を合わせて拭き出す。

 夏休みも残り二週間、後どれだけの思い出を成宮と作っていけるだろう?


 早く、恋人になりてえ。


「和也」

「ん?」

「和也の誕生日はいつ?」

「九月九日」

「わかった、覚えておく。ちゃんとお返ししたい」


 成宮はにっと口角を上げる。

 そして、ぼそっと恥ずかしそうに呟く。


「恋するって、心地いい」

「そ、そうか」

「もっと、和也のこと甘やかす」

「なんでそうなる」

「だって、甘やかしてる間は触れていられるから」


 微かに頬を染めながら、成宮は視線を逸らす。

 ほんと、こいつは。


 可愛い奴だよ。

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