想いよ届け2
ショッピングモールと言っても都市部にあるような大きなものではなく、田舎らしい小規模な複合施設だ。ここらの学生のたまり場であり、若者向けの娯楽やファッション店が併設されている。
適度にクーラーの効いたショッピングモールに入店すると、夏休みということもあって多くの人でにぎわっている。
「人、たくさん」
「よし、今日は遥の買いたいものを買いに行こう」
「え、いいの?」
「おう、貯金はあるから任せとけ」
去年学校をサボって貯めた貯金はそこそこある。
日頃の感謝の意味込めて、今日は成宮を存分に楽しませてやりたい。
同時にプレゼント探しも出来る。我ながらナイスアイディアだと思う。
俺の提案に成宮はきらきらと目を輝かせている。
「お言葉に甘える」
「どんと来い」
どんと胸を叩くと成宮は感心したように拍手する。
「まずはどこに行く?」
「まずは服、見たい」
「服か、よし行こう」
大見得を切って見せたが、ものの数十分で後悔することをこの時の俺はまだ知らなかった。
両手には数個の紙袋。
一体、いくつの店をまわっただろうか? 途中から数えていない。
だが、これは自分から蒔いた種だった。
服屋に入っても見ているばかりの成宮に、遠慮しないで買っていいなんて言い過ぎた。
いや、だって。どれもこれも成宮に似合うのがいけないんだ。
可愛い姿が見られるなら、買ってあげたくなるというもの。
「やっぱり、持つ?」
「大丈夫だ」
心配そうに俺を見る成宮を制し、笑って見せる。
今日は成宮が主役なのだ、俺は荷物持ちでいい。
しかしながら、今のところ成宮が自主的に欲しいというものはない。
どうしたものか、と考えていると不意に成宮が足を止める。
「どうした?」
「ん、えっと。あれ、見てもいい?」
指さす先にあるのは、若い女の子向けのアクセサリーショップ。
落ち着いた雰囲気の店先には、制服姿の女 頷くと、成宮はアクセサリーショップに入っていく。
俺も続いて入店すると、成宮はネックレスや指輪ではなくキーホルダーを見ている。
「可愛い」
手に取っているのは、猫があしらわれた可愛らしいキーホルダー。
装飾が凝っており、少し値段が張るようだ。
「猫、好きなのか?」
「うん、好き。ごめん、ちょっとトイレ」
キーホルダーを棚に戻すと成宮は小走りに店を出て行った。
改めて手に取ってみると女の子が好きそうな可愛らしさ。しかし、結構、高いな。
財布の中身を確認してみるとギリギリ、足りると言ったところ。
バイト、またしないといけないけど成宮が喜んでくれるかもしれない。
選択肢は一つしかなかった。




