表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/41

想いよ届け2

 ショッピングモールと言っても都市部にあるような大きなものではなく、田舎らしい小規模な複合施設だ。ここらの学生のたまり場であり、若者向けの娯楽やファッション店が併設されている。


 適度にクーラーの効いたショッピングモールに入店すると、夏休みということもあって多くの人でにぎわっている。


「人、たくさん」

「よし、今日は遥の買いたいものを買いに行こう」

「え、いいの?」

「おう、貯金はあるから任せとけ」


 去年学校をサボって貯めた貯金はそこそこある。

 日頃の感謝の意味込めて、今日は成宮を存分に楽しませてやりたい。


 同時にプレゼント探しも出来る。我ながらナイスアイディアだと思う。

 俺の提案に成宮はきらきらと目を輝かせている。


「お言葉に甘える」

「どんと来い」


 どんと胸を叩くと成宮は感心したように拍手する。


「まずはどこに行く?」

「まずは服、見たい」

「服か、よし行こう」


 大見得を切って見せたが、ものの数十分で後悔することをこの時の俺はまだ知らなかった。


 両手には数個の紙袋。

 一体、いくつの店をまわっただろうか? 途中から数えていない。


 だが、これは自分から蒔いた種だった。

 服屋に入っても見ているばかりの成宮に、遠慮しないで買っていいなんて言い過ぎた。


 いや、だって。どれもこれも成宮に似合うのがいけないんだ。

 可愛い姿が見られるなら、買ってあげたくなるというもの。


「やっぱり、持つ?」

「大丈夫だ」


 心配そうに俺を見る成宮を制し、笑って見せる。

 今日は成宮が主役なのだ、俺は荷物持ちでいい。


 しかしながら、今のところ成宮が自主的に欲しいというものはない。

 どうしたものか、と考えていると不意に成宮が足を止める。


「どうした?」

「ん、えっと。あれ、見てもいい?」


 指さす先にあるのは、若い女の子向けのアクセサリーショップ。

 落ち着いた雰囲気の店先には、制服姿の女 頷くと、成宮はアクセサリーショップに入っていく。  

 俺も続いて入店すると、成宮はネックレスや指輪ではなくキーホルダーを見ている。


「可愛い」


 手に取っているのは、猫があしらわれた可愛らしいキーホルダー。

 装飾が凝っており、少し値段が張るようだ。


「猫、好きなのか?」

「うん、好き。ごめん、ちょっとトイレ」


 キーホルダーを棚に戻すと成宮は小走りに店を出て行った。

 改めて手に取ってみると女の子が好きそうな可愛らしさ。しかし、結構、高いな。


 財布の中身を確認してみるとギリギリ、足りると言ったところ。


 バイト、またしないといけないけど成宮が喜んでくれるかもしれない。

 選択肢は一つしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ