想いよ届け1
三章開始です!
夏休みも中盤を迎え、互いに想いを秘めたまま過ごす日々。
なにかが変わったかと聞かれれば、違う気がする。ぎくしゃくすることもなければ、意識しすぎることもない。
むしろ、成宮の想いを聞いたことで、胸の奥に仕えていたものが取れた気がする。
両想いのようで、両想いではない。なんとも奇妙な関係のまま、昼食を食べ終えやることもなくぼーっとしていた。
「課題も終わったし、暇だなぁ」
「たまにはこういうのもいい」
成宮もまた、勉強をするわけでもなく隣に座って読書をしている。
最近話題の文庫本のようで、今度映画化するらしい。
「和也も読書するといい」
「読書って言われても雑誌くらいだし、家にあるのはほとんど読んだ」
「そう」
読書に集中しているらしい成宮は、いつもより返事が素っ気ない。
それがどこか寂しく感じてしまう。隣にいるのに、違う世界にいるような。
だが、読書を邪魔するほど野暮ではない。
なにか出来ることはないかと辺りを見渡すと流し見しているテレビで誕生日の特集をしていた。
そういえば、成宮の誕生日はいつなのだろう?
知り合って数か月経つが聞いたこともなかった。
「なあ、遥の誕生日っていつだ?」
「来週」
「来週か、近いな。って、来週!?」
「うん」
「なんで言わない」
「必要性を感じなかった」
ページをめくりながら、成宮は淡々とした様子で言う。
必要性を感じなかったって、これまで誕生日をどう過ごしてきたのだろうか?
成宮は視線を本に落としたまま、話を続ける。
「誕生日を祝われたこと、一度もない」
「え、両親とかにもか?」
「覚えている限りは。二人とも忙しそうにしていたから」
見せる表情は悲しいとか、辛いとかではない。
ただ、それが当然だったかのような顔で平然としている。
忙しくたって、子供の誕生日くらい祝うだろ。俺だって、毎年祝ってもらってたのに。
プレゼントとか、あげたい。生まれてきたことは素晴らしいことなんだって、祝ってあげたい。
俺は成宮に気づかれないよう、辰真にMINEを送った。
しばらくして読書が終わったらしい成宮は色っぽい声を出しながら背伸びをする。
時刻はまだ午後を回ったところで、太陽は傾き始めてもいない。
「遥」
「なに?」
「やることないなら、出かけないか?」
「いいけど。珍しい、暑いから外行きたくないっていつも言ってるのに」
「それはそれだ。ほら、用意しろ」
「わかった。着替えてくる」
成宮は誘いに乗ってくれたらしく、一度自室に戻った。
さて、着替えるか。
用意を終えて数十分もすると成宮がショートパンツスタイルの可愛らしい成宮が戻ってきた。
「どこ行くの?」
「駅前のショッピングモール」
「人込みも嫌いじゃなかった?」
「今日はいいんだよ。ほら行くぞ」
首をかしげている成宮に用件も伝えることなく、半ば強制的に連れ出す。
目的はただ一つ。成宮に誕生日プレゼントを買うことだ。
三章が始まりました!
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