揺れる乙女心10
勝負の期末考査期間はあっという間に終わり、テスト結果が返却されることになった。この学校では全教科の結果と模範解答、学年順位がまとめて封筒に入れられ各生徒に手渡される。
LHRで渡された封筒を鞄にしまう。結果は家に帰ってから見ようと成宮と約束をしていたため、一喜一憂するクラスメイトを横目に成宮と二人教室を出た。
並んで帰ることにも慣れた、午後の猛暑日。
夏服の成宮は何度見ても可愛らしい。
つけっぱなしのクーラーがよく効いた自室に帰り、二人でソファに座る。
それぞれ鞄から封筒を取り出した。
「どっちから見る?」
「遥からにしてくれ。どうせ、一位だろ?」
「まだ、わからない。こほん、では私から」
成宮は封筒から用紙をまとめて取り出すと、一番後ろにあったテスト結果を自信満々に見せつけてきた。
「学年一位」
「だろうな」
やりました、と言わんばかりに胸を張る成宮だが毎回のように一位を取っているせいかこちらとしては特に驚くこともない。
反応が薄いことが気に食わないのか、成宮は不満そうにふくれていた。
「褒めて」
「よく、頑張りました」
「えへへ」
心のこもっていない褒め言葉だったが、成宮は満足したらしい。
マイペースなのか、天然なのか、相変わらず調子が狂う。
さて、次は俺の番だ。いつになく緊張しながら封筒から用紙を取り出す。
パッと見た感じは、当然と言えば当然だが丸印が少ない。
赤点回避はギリギリか? 自信のあった国語でさえ平均ギリギリ。
因みに赤点の場合は最後に追試のお知らせが入っているとのことだが……
「ん?」
ぺらぺらとめくってみるが、それらしい用紙は入っていない。
成宮も心配そうにのぞき込んでくる。
「どう?」
「回避、できたっぽい?」
「ぽい? 貸して」
確信のない返事に、成宮は不安そうに俺のテスト用紙を取るとなにやら、計算し始めた。スマホの電卓に数字を打ち込み終えるとニコッと笑顔を咲かせた。
「赤点じゃ、ない」
「まじで?」
「まじ。よく頑張ったね、和也」
成宮は机にテスト用紙を置くと、俺を胸にうずめるように抱き寄せた。
何度もやられているが、いまだおっぱいの感触にはなれない。
こいつは甘やかしたい度が高すぎる。赤点回避できて嬉しいが、俺の理性をおっぱいで破壊するのはやめてほしい。
おっぱいで窒息しそうになったところでようやく離してくれた成宮は、おかしそうに笑った。
「そんなにデートしたかったの?」
「お、おう」
「いいよ。約束通り、デートしよ? どこ行く?」
「それは、もう決めてる」
「どこ?」
「お気に入りの場所だ」
成宮はどこだろう、と首をかしげている。
行くのは今まで、誰にも教えたことのない場所。
昔、俺がじいちゃんに連れて行ってもらった大切な場所だ。




