揺れる乙女心7
「俺のこと、どう思ってるんだ?」
聞かずにいられなかった想いがついに溢れてしまう。
好意はないと言っていた成宮の気持ちを改めて確認したくて。
成宮は急な質問に驚いたのか、目を大きく見開く。
訪れる、沈黙。成宮は答えに詰まった様子で口元に手を当てている。
時計の秒針の音だけが響く中、成宮は静かに口を開いた。
「まだ、わからない。私、和也のことどう思ってるか、わからない」
「そう、か」
「でも、ね。前よりは、好き、だよ?」
微かに頬を染め、成宮は恥ずかしそうに目線をそらす。
明確な答えはえられなかったが、以前よりも好感度が上がっていることは前向きにとらえてもいいだろう。
ずっと心の中で悶々としていた気分が少し、晴れた気がした。
「変なこと聞いて、悪かった。じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
互いに背を向け、眠りにつく。
いつか、きちんと成宮に好きだって言ってもらえるように頑張らないと、な。
翌朝、起きると隣に成宮はいない。
リビングの方を見ると、制服にエプロン姿の成宮がキッチンに立っていた。
制服姿になっているところを見ると、一度自分の部屋の戻ったのだろう。
欠伸をかみ殺しながら起きると、俺に気づいたのか。
朝食の用意を終えた成宮がそわそわした様子で俺に近づいて来た。
「お、はよう」
「おはよう。どうした?」
「あのね、昨夜のこと、ずっと考えてたんだけど。……和也は私のこと、好き、なの?」
頬を赤く染め、胸の前で両手を握りながら成宮はもじもじしている。
あんな質問をしたせいか、眠れずに考えていたのかもしれない。
好きか、と聞かれれば、好きだ。
そして、俺はここで下手に誤魔化すような男ではない。
「ああ、好きだよ。好意じゃなくて、恋として」
「そっ、か」
か細い声で、恥ずかしそうにしながらも成宮は嬉しそうに微笑んだ。
「おう。だから、成宮の気持ちが固まったらちゃんと告白する」
「ま、待たせちゃうね」
「待つよ。いつまでも」
成宮との距離が、また一歩近づいた気がする。
意識させることには、成功したのだろうか?
成宮の答えが聞けるのがいつになるのかわからないが、今は待とう。
「朝飯、食おうぜ。腹減ったわ」
「うん」
食卓に向かい合わせで座り、作ってくれたサンドイッチを食べる。
今日から、期末考査。
勝負の一週間が始まる。




