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揺れる乙女心6

 一人用のベッドにカップルではない男女が二人。

 しかも、相手は背中に頭を預けてきている。寝苦しい以前の問題だった。


 自分でも心臓の早鐘が大きくなっているのがわかる。

 今にも理性が飛びそうなくらいには、成宮の体温が伝わってくる。


 これまで数々の甘やかしに耐えてきたが、群を抜いてる。

 もはや甘やかしではない、成宮からの一方的な甘えだった。


「たまには、甘えてみるのもいい」


 手のひらの暖かさ、胸の柔らかさ。色んな情報に俺の脳はショート寸前である。

 しかし、マイペースを貫く成宮は声色を変えることなくささやく。


「知り合って、二か月くらい経った?」

「そう、だな」

「たくさん和也に助けられた」

「そうか?」

「うん。だから、今日はそのお礼。甘やかすんじゃなくて、甘える」


 成宮はより体を密着させてくる。

 耳元で囁く形になっているせいか、やけに成宮の声が色っぽく聞こえる。


 男子にとっては良くない状況だった。背を向けているのが悪いのか、思い切って寝返りを打ったが、今度は間近に成宮の顔があって落ち着かない。


 どうすればいいんだ、と悶えていると成宮がそっと俺の頭を撫でた。


「和也は、ほんと優しい」

「お、俺が?」

「うん。私の一方的なお礼も拒むことなく受け入れてくれる」

「まあ、悪くは思ってない」

「ありがと」

「こっちの台詞だ。遥と出会ってから退屈しなくなった」


 どうにも気恥ずかしくて、思わず視線をそらす。

 成宮と出会ってから二か月しか経っていないというのが嘘みたいに濃い二か月だった。


 最初はただ甘やかしたいだけだと思っていたが、こいつはお礼の仕方が極端な不器用な人間なのかもしれない。そう思ったら成宮がもっと可愛く思える。


 ああ、俺はやっぱり成宮のことが好きなんだ。

 改めて思う、隣にいてこんなに安心する奴はいない。


「明日、テストだな」

「赤点は回避できそう?」

「頑張るよ」

「頑張って。ご褒美が待ってる」


 成宮はおかしそうに笑う。

 薄明りに照らされたその笑顔は魅力的で、愛おしい。


 タイミングとか、今聞くべきなのか、とか悩んだけれど。

 もう、聞かずにはいられなかった。


「なあ」

「なに?」

「前に俺に対して好意はない、って言ってたよな?」


 ごくり、と生唾飲み込んだ。


「今は、俺のことどう思ってるんだ?」

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