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揺れる乙女心5

 ソファで静かに眠る成宮を起こさないよう風呂に入ったものの、ここからどう行動するのが最適だろうか? 起こして家に帰ってもらうのか、眠らせておくのか。


 可愛らしい寝顔を堪能できるという意味では後者だが、男子高校生の社会的理性を保つためには前者が正しい。しかし、疲れている成宮を無理やり起こすのも気が引ける。


 というわけで、何故か俺は成宮の横に座って寝顔を堪能していた。


「よく寝てるな」


 すやすやと寝息を立て、楽しい夢でも見ているのか、成宮はにこにこ笑っている。

 写真でも撮りたいところだが、隠し撮りなんて趣味ではないのでやめる。許可なくやるわけにはいかない。


 時刻は22時を過ぎた。

 テレビをつけることも出来ず、無言のまま成宮を見つめる時間が続く。


「うぅん……」


 不意に寝返りをうった成宮に、俺の視線は一点に集中した。

 私服姿のまま寝ている成宮だが、胸元が少し緩いようで仰向けの状態だと胸の谷間が少しばかり見えている。


 こいつ、寝てる時まで俺を誘惑するつもりか?

 成宮の美乳に理性を殴られていると、ソファでは寝苦しかったようで成宮がのそりと起き上がった。


「私、寝てた?」

「あ、ああ」

「そう。じゃあ、このまま泊まることにする。和也、ジャージかなにかを貸してほしい」

「え」

「え、じゃない。今から自室に戻ったら変に目が覚めてしまう。お風呂、借りる」


 マイペースな成宮は俺の返事を待つことなく風呂場の方へと向かっていく。

止める隙もなかった。……ジャージ、用意するか。


 リビングで一人、聞こえてくる水音を聞きながら無を保つ。おかしい、成宮を部屋に帰すつもりだったのに、どうして泊まることになってんだ?

 しかも、風呂には今、裸の成宮がいる。はっ、俺は硬派、俺は硬派。女の裸なんて想像しな……


「お風呂、ありがとう」

「おぉう!」


 妄想を打ち消そうとしたところで、サイズの合わないだぼだぼのジャージを身にまとう成宮が現れる。濡れた髪、微かに染まった頬。妙なエロさが俺を刺激する。


「お風呂、意外にキレイだった」

「ま、まあな。一応」

「偉い。ふあぁ……、眠い。和也、一緒に寝よう」

「寝るわけねえだろ。俺はここで寝る。申し訳ないが、俺のベッドで寝てくれ」

「そう。いつでも来ていいからね」


 成宮は今一度大きな欠伸をすると、遠慮なく俺のベッドに寝転んだ。


「和也の匂いがするぅ」


 何気ない発言だろうが、俺には大ダメージだ。

 聞かなかったことにしてソファに寝転ぶが、男が寝るには狭すぎる。疲れが取れる気がしない。寝付けないでいるとそれに気づいた成宮が向こうの方から俺を誘う。


「一緒に寝よ」

「う、うるせ。俺だって男だぞ」

「和也はダメヤンキーだから、付き合うまではそういうことしない」


 全くの図星だった。思春期真っ盛りの男子ではあるが、一夜にして狼になる勇気はない。

 つまりは、もう。疲れを取るには一緒に寝るしかなかった。


「いらっしゃい」

「も、もう寝る」


 笑顔で俺を向ける成宮に背を向け、なるべく端によるが背中に妙な温かさを感じた。

 振り向くと、なぜか成宮が俺の背中に頭を預けていた。

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