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揺れる乙女心2

 赤点回避を目指し、勉強の日々。

 学校の休み時間も続ける俺の姿に、辰真はにやにやしながら近づいてくる。


「次は勉強って、お前、ずいぶん変わったな」

「うるせ。こちとらデートがかかってるんだ」

「デート? ああ、成宮か」

「おう、初デートだ」

「はあ、あれだけのことがあったのにまだ付き合ってないとか、ないわ」


 やれやれと言った様子で辰真は俺を見る。

 そりゃ、仲は深まったかもしれないが、付き合うとかはまた別の話で合って。


 ペンを回しどう反論しようか考えていると辰真はあきれた様子で肩を叩く。


「とにかく、はよ付き合っちまえ。見てるこっちがじれったいわ」

「わかってるわ。そうだ、辰真。この前の礼、ちゃんと考えといてくれよ?」

「ああ、別にいいのに。まあ、もらえるならお言葉に甘えて考えとく」

「おう。まじで感謝してるから」

「あいよ」


 始業のチャイムが鳴ると辰真は自分の席に戻っていく。

 辰真の助けがなければ成宮を助けられなかったわけで、やれることがあるならやってやりたい。


 因みに辰真から聞いた話だと、矢頭は退学処分になったらしい。

 うっとうしい奴が消えてほっと一安心だ。


「さて、授業も真面目に受けますかね」


 教科書とノートを開き、準備完了。

 まさか授業をきちんと受ける日が来るとは考えもしなかった。


 放課後、一日真面目に授業を受けたせいか体が凝り固まっている。

 こんな苦行を毎日のように受けてると考えたら、クラスメイトが初めてすごいと思えた。


「帰ろ?」

「あ、ああ」


 背伸びをしながら窓の外を眺めていると授業のまとめが終わったのか、成宮が声をかけてくる。成宮は授業が終わると放課後に一日のまとめをするのが日課だ。


 俺と知り合う前から、一人教室に残ってやっていたらしい。

 家でやるよりも効率がいいらしく、帰宅時間は遅くなっていたそうだ。


 そりゃ、同じアパートでも顔合わせないよなあ。


 学校から出ると夕方だというのに日差しはまだ鋭い。

季節はすっかり夏を迎えていて、期末考査を終えれば夏休みである。


「夏休み、遥は実家に帰ったりするのか?」

「去年も家にいたから予定はない」

「そうか」

「和也は?」

「俺か? まあ、帰るかもしれないが向こうから来るかもしれない」

「挨拶しなきゃ」

「いや、やめてくれ。絶対にネタにされる」


 目をキラキラさせ気合を入れる成宮だが、家族に合わせるわけにはいかない。特段家族仲が悪いわけではないが、両親はまだしも妹が見たら確実にいじられる。


 そういや、妹の美雪とはしばらく連絡とってないな。

 あいつ、元気にしてるのだろうか?



 スーパーで買い出しを済ませ、アパートに戻る。

 鍵を取り出し開けようとしたのだが、違和感を覚えた。


 開いてる? 鍵を閉め忘れた? いや、成宮も一緒に確認しているし、ないだろう。だとしたら泥棒か? 成宮を守るようにしながら静かに玄関を開けると、どたばたと音を立てなにかが飛び出してきた。


「おっす! 久しぶりだね、兄貴!」

「み、美雪」

「そう、美雪だよ! 夏休み前に様子を見て来いってお母さんに言われたんだけどさあ」


 美雪は完全に獲物を捕らえたかのように、小悪魔っぽく笑いながら後ろに控える成宮を見る。


「兄貴の後ろにいる、可愛い子、だーれ?」

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