揺れる乙女心1
二章開始です!
好きだと自覚してから成宮を妙に意識してしまう日々だ。
隣にいることも多いせいか、前はドキリとしなかった言動にやられてしまう。
甘やかしは拍車をかけて酷くなっているし、毎日一人で悶々し続けている。
意識しているのは俺だけなのか、成宮は態度を変えていない。
成宮は俺が好きなのだろうか?
気にはなるものの、ないと言われるのが怖くて改めて聞くことが出来ずにいた。
金曜の夜、夕飯を食べ終え洗い物を終えると期末考査が近いこともあり成宮は真剣な顔つきで勉強をしていた。
「なにか飲むか?」
「大丈夫」
参考書とにらめっこしながら成宮は素っ気なく返す。
邪魔しちゃいけないよ、な。しかし甘やかされ続けるというのは怖いもので、なんでもいいから彼女と話がしたくてたまらない。
勉強をする成宮を邪魔しないように構ってもらう方法。
我ながら母親に構ってもらえない子供のようで気色悪いが、好きな女子と話したいのだから仕方ない。
しかし、ゲームやテレビに誘うのは場違い。
残された選択肢は、一つしかなかった。
「勉強、教えてくれないか?」
「え? 熱でもある?」
「なんでだよ」
「だって、和也が勉強なんて。動物が喋るよりありえない」
完全に疑いの眼差しで成宮は俺を見ている。
心外だ、俺だって勉強くらいする。動機は不純だが、する時はするのだ。
「き、気まぐれだ」
「ふーん。いいよ、教えてあげる」
悪戯っぽく口角を上げ手招きする成宮に誘われて隣に座る。
科目は国語、読解問題から手を付けたのだが、全くもって意味がわからない。
作中の登場人物の気持ちも、作者の気持ちも知ったことではなかった。
「わっかんね」
「お手上げ?」
「だってよー」
くるくるペンを回し考えてみるが、答えが思い浮かぶ兆しはない。無理もない、高校に入ってからろくに授業に出ていないのだから。
唸り続ける俺に、成宮は妙案を思いついたらしくとんとん、と肩を二回たたいた。
「ん?」
「もし、和也が赤点回避出来たら、私とデートする権利を贈呈する」
「まじすか」
「まじです」
思いがけない提案に、やる気が出るどころかあふれている。
デートって、デートだよな? 二人でどこかに出かけるってことだよな? ショッピングとか、水族館とか行けるんだよな!? 妄想はとどまることを知らない。
赤点くらい、回避してやる。
俺は成宮とデートがしたい!
「もっと教えてくれ!」
「急にやる気でた。ふふ、和也、可愛い」
はしゃぐ俺に、成宮は両肘をつき手に顎を乗せた状態で微笑む。
いや、可愛いのはお前だよ。
二章が始まりました!
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