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第91話 二人のネコ


休み時間になった途端に沢良木君が席を立った(逃げた)ようで、ようやく菅野ちゃんの元へクラスの皆が集まった。

だが、その人だかりは明らかに女子率が高かった。


確かに、朝からのアレをずっと見せつけられちゃあ、男子は萎えてしまうよなぁ。

それでもお近づきになりたい男子は居るようだけど。


私は朝から繰り広げられていた光景を思い出し、苦笑いした。

一人の男子を二人の美少女が取り合うとか、他の男子からすれば嫉妬しか向けられないだろう。

まあ、最終的には窶れた沢良木君の姿にクラス中が生暖かい視線に変わっていったから私は面白かったけど。


私も輪の中に入り、友人の様子を伺う。


「って、なんでいきなり睨み合いっ!?」


私は思わず突っ込んでいた。


輪の中に入ると、愛奈ちゃんと菅野ちゃんが何やら睨み合っていたのだ。


「あ、唯ちゃん」


と、愛奈ちゃんはすんなり視線を外すと、私に向き直った。


なんだか愛奈ちゃんのキャラが分からなくなってきたよ……。普段のイメージとかけ離れているというか。

まあ、それだけ沢良木君が好きって事だろうしな。

そして、ライバルが強敵で。


放って置けばまた直ぐに睨み合いを始めそうな二人を、一応窘める。


「ま、まあ、そんな喧嘩しないでだな……」


「「してない」」


ハモる返事。

そして、再び睨み合う。

まあ、無理だとは思ったけどさ。


周りの女子はその様子を興味津々といった様子で見ていた。

まるで漫画のような状況が目の前で繰り広げられる事に興奮しているのかも知れない。

最近では愛奈ちゃんと喋る人も多くなってきたから、皆も加わり易いんだろう。


「斉藤さん頑張ってね!」「負けちゃだめだよ!」「応援してるよ!」


等と、現に愛奈ちゃんを応援する子がいたり。


「菅野さんがどう思ってるかは態度見たら分かっちゃうよねー!」「転校先で再会?とかロマンチックだね!」


と菅野ちゃんへ話かけたり。

落ち着きのない騒がしい様相だった。


「真澄ちゃん握手してくれー!」「サインくれー!」

等と突撃してきた男子は女子に阻まれ呆気なく撃沈していた。

そして、気付けばこの輪には男子の入り込む余地など無くなっていた。

圧倒的女子率だね。


「ねね! 実際の所、菅野さんと沢良木君ってどんな関係なの?」


と一人が改まって菅野ちゃんへ問う。


その質問にうんうん、と皆が頷く。

当然、誰もが気になる所だろう。

菅野ちゃんの態度から彼女が沢良木君をどう思っているのかは一目瞭然だが、その背景などは全くの未知数だった。

元アイドルとイケメン高校生の色恋、なんて字面からして惹かれるのも頷ける。

片や元アイドル、片や最近騒ぎになった隠れイケメンである。


そもそも、それを聞く機会がやっと訪れた、といった所なのだが。


愛奈ちゃんも睨む様子は鳴りを潜め、菅野ちゃんを見つめ言葉を待っている。

その表情は不安げで先程までの威勢は何処にも無かった。


菅野ちゃんも愛奈ちゃんのその視線に気付いたようだった。

すると彼女の方も先程までとは打って変わって気まずそうな表情になり、視線を逸らした。


「ま、まあ……その。……ま、まだ友達よ!」


頬を赤くしながらそっぽ向く菅野ちゃんの姿に愛奈ちゃんはホッとした様子だった。


「あ、貴女こそどうなの!?」


「わ、わたし?」


菅野ちゃんは誤魔化すように愛奈ちゃんへと質問を振った。

急に呼ばれた愛奈ちゃんも驚いた様子だ。


「わ、わたしも、その……まだ、友達……だよ」


顔を真っ赤にしながら呟く愛奈ちゃんに、見ている方まで恥ずかしくなってくる。


それにしても、お互いに"まだ"なんて付けるあたり、どんだけ沢良木君が好きなんだって話だけどね。


二人共可愛いなぁ。


二人の言葉に周りも大いに盛り上がりを見せていた。

これで、一人の男子を取り合う二人の美少女と言う構図が現実の物となったわけだし。

これからへの期待が膨らむだろうさ。


「それで、二人共! 具体的にはどんな仲なのっ!? 」


問いかけが菅野ちゃんから二人共へ変わっていた。

確かに、愛奈ちゃんが沢良木君と仲良くしているのは皆もなんとなく分かるけれど、詳しくは知らないもんな。


「え、ええっ!? い、言うの……?」


依然真っ赤なままの愛奈ちゃんが更に赤くなる。

……倒れないよね? と心配になってしまう程だ。

でも、小動物的な可愛さが素晴らしいな!

相変わらず愛奈ちゃん可愛い。


そんな愛奈ちゃんとは対極に菅野ちゃんは自信有りげに胸を張る。

……お、おっぱい大きいな。

羨ましい……。


「宗君は身体を張ってあたしを危険から救ってくれたの!」


おおっ、と菅野ちゃんの言葉に周りが盛り上がる。

菅野ちゃんは続ける。


「宗君には夏休みの間ずっとお世話になってたんだよ。何もわからないこの町に越して来て、あたしが心細い時、宗君は直ぐに駆けつけてくれて……一緒に、居てくれて。最後には、あたしを助けてくれた……」


最初は自信たっぷりに語り出した菅野ちゃんだったが、話を進める毎にその声は小さくなって、終いには俯いてしまった。

どうしたのか、と皆が心配する中。


「……って、恥ずかしいねこれっ!!!」


バっと、顔を上げた菅野ちゃんは先程までの愛奈ちゃんと同じ様に真っ赤になっていた。


流石元アイドル……。

凄く可愛いじゃないかっ。

沢良木君も靡いてしまうんでないか?

これは愛奈ちゃんも危うしか!?


「むぅ……」


その愛奈ちゃんは菅野ちゃんの話にむくれていた。


「わ、わたしだって、沢良木君に助けて貰ったもんっ!!」


張り合う様に放った愛奈ちゃんの言葉に周りは盛り上がる。


「ふぅん? それじゃあ、どんな事があったのか教えて貰おうかな」


菅野ちゃんは面白くなさそうにしながらも耳を傾けている。

やはり気になるんだろうね。


むっとした顔をしながらも愛奈ちゃんは頷く。

一学期の事だけど、と愛奈ちゃんが語り始めた。


「わ、わたしの不注意で怖い人達に囲まれて、連れ去られそうになった時があったんだけど。その時に沢良木君が駆けつけてくれたの。必死に走って、わたしを探して助けに来てくれたんだ! 少し前にわたしが酷い事したのにそれでも追いかけて来てくれたの! 凄く嬉しかったな……」


いっぱいいっぱいになりながらも懸命に語る愛奈ちゃん。

でも、その時思い出してか幸せそうな嬉しそうな表情をしていて。


その表情を見た菅野ちゃんが今度はむくれていた。


女子達はその話にキャーキャー言って喜んでいた。

彼女達二人の話からすると、まさしくヒロインを救うヒーローの様な活躍だ。

その上イケメンときたら出来すぎてるよなぁ。




しかし……。


沢良木君、君は一体何をしているんだ?

いや、彼女達を助けたのは紛れもなく良いことなんだろうけどさ。

何でそこまで巻き込まれるのさ……。


彼女達の様子からすると、きっとそれだけでは無いだろうしな。

……フラグ立てすぎじゃないかな?

主人公の素質というかなんというか。


「し、宗君は優しいからなー! 困った人が居れば、その気が無くても助けちゃうもの!」


「そ、そうだよねっ! 沢良木君は優しいから、その気が無くても助けてくれるよね!」


「「……」」


あ、あはは……。

二人ともお互いに牽制して一歩も引かないね。


「「むうぅぅ……」」


二人は再び睨み合いを始めてしまった。

二人を見ていると、ネコが威嚇しあってるみたい。

しゃーっ……とでも聞こえてきそうな感じだね。

これはこれで、可愛いと思うけど。

渦中の沢良木君からすればおおごとだろうけどさ。

まぁ、部外者目線だしね!




その後も二人は張り合いながら沢良木君との思い出を競い合う。

それはすなわち周りにネタを提供する事と同義で。

周りはどんどん盛り上がっていく。

それは予鈴が鳴るまで続いた。


なんだかんだ言いつつも私も随分と楽しんでしまった。

いやぁ、沢良木君は面白いな!

話を聞いていて、思わず羨ましくなってしまったよ。

ダーリンが悪い訳ではないが、沢良木君程のハプニングスターにはなれんだろうからなぁ。

私も二人みたいな可愛らしいヒロインって感じじゃ無いしなぁ。

だけど、私だって小さな頃から健太が好きで、そして付き合えた事が……って私の事はいいんだよ!


愛しのダーリンの方を見ると沢良木君と二人で何やら話をしていた。

端から見ていると、なんだか二人共楽しそうに見える。

……あの二人、案外仲良いよな。

意外と合うんじゃないかと私は思っていたりするんだ。ダーリンも沢良木君のこと面白いヤツとか言ってたしな。


先程の女子達の話を沢良木君本人が聞いたら一体どうなるんだろうね。

恥ずかしさのあまり学校に来れなくなるんじゃないだろうか。

ふふふ、正に知らぬが仏といったところだね。


すれ違う女子達に声援をかけられ首を傾げる沢良木君に、私は一つ笑いを溢すのだった。


まあ、頑張れ色男!












お読み頂きありがとうございました。


今回は唯ちゃん視点でした。


次回もよろしくお願いいたします。

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