【50】 2章の17 旅立
このところ投稿が遅くなって申し訳ありません!
※誤字脱字報告、ありがとうございます!
「──早めに帰って来て下さいね、メルカさん……」
「頑張ってみますよ。ありがとうございます、チロッペさん」
「何かあっても『あの子』が何とかしてくれるでしょうけど……メルカさんも、困った事があったら遠慮なく言うようにして下さいね?」
「分かりました、レティシアさん」
「……忘れ物は、無い?」
「はい……大丈夫ですよ、レイフェちゃん」
「……ん」
開店前の店先に立って俺を見送ろうとしてくれてるのは、チロッペたんとレティシアさん、そしてレイフェちゃんだ。
俺は一人だけ大きめの〈背負い鞄〉を担いで、3人の方を見ている。
昨日は色々とあったせいで、準備の手が止まったりもしてしまったが。
幸い、今日の出発までには準備も間に合った。
……と言っても、元々の〈鞄〉の中身に、それなりに立派な保存食の類を7日分入れただけだ。
保存食の代金に関しては、レティシアさんに渡した『聖銀貨』から引いとく、何て言っていたが……ちゃんと貰ってくれるのだろうか? 預かるって言ってたから、そのまま返ってきそうな予感がするんだが。
まぁ、その時はその時で、昨日細かく崩して貰った分か、『身分証』に預金した分で支払おうとは思ってるけどな。
と、迎えが来るまで3人と雑談しながら、内心別の事を考えていると。
何かに気付いたようにチロッペたんが首を捻る。
「……あれ? メルカさん、何かレイフェの……呼び方変わってませんか!?」
「え?」
……あー、そうか昨日の夜の事だもんな。
「……その、昨日……レイフェちゃんにお願いされまして」
「昨日? え、食事の時は一緒だったし……その後? え、いつ?」
「あらあら、レイフェが積極的だわ……」
「え、お母さん? それってどういう事!?」
レティシアさんの呟きに、チロッペたんが慌てている。
この件に関しては俺のミスみたいなもんだからな……笑って誤魔化しておこう。
「あはははは……」
「……メルカ」
チロッペたんとレティシアさんを見ながら苦笑していると、こっそり近づいて来ていたレイフェちゃんがチョイチョイと手招きしている……何だろ? お出かけのキスでもしてくれるのか? ハハッ無い無い。
ともあれ、レイフェちゃんに耳を寄せる。
「──メルカ。本当に、大丈夫?」
「えっと……はい。何も忘れてはいませんよ? と言っても、実際に遠出するのは初めてなので、きっと何かは忘れているとは思いますけど」
心配そうな顔のレイフェちゃんに、また苦笑しながら返事をする。
実際、旅路に何が必要かとか何が不要かなんて、行ってみないと分からないからな。経験無いし。
「……分かった。メルカが戻ってくるまで、ボクも頑張る」
「レイフェちゃん……」
まだ何処か不安そうにしながらも、グッと手を握って言うレイフェちゃんに。
俺は、何も言えない……どうせ俺は大した事は出来ないからだ。
一人前になる為に、ずっと頑張ってきたレイフェちゃんとは……違う。
でも、そんな事は口に出来ない。
「ワタシも、頑張りますね!」
「──ん? あ! 『アレ』じゃないですか!?」
レティシアさんと楽しそうに喋っていたチロッペたんが、ふと何かに気づいたように声を上げた。
その視線を追ってみれば、なるほど確かにそれらしい〈大きな馬車〉が、こちらに近付いてきているのが目に入った。
御者をしているのは……見覚えのないオッサンだが、専門の運転手のようなものだろうか。
しかし、想像してたよりも結構デカい。
座っている御者の脚は俺の頭より上の位置だし、後ろの箱……馬車本体の乗車スペースはマイクロバス……まではいかないが、大型のバンよりもデカイんじゃないだろうか。
後、全部が『箱』になってる訳じゃなくて、後ろの3分の1はトラックの荷台みたいになってるな……荷物スペースってやつか? 今は、その縁からデカイ樽が載ってるのが見えるだけだが。
何て俺が考えている間にも、店の前でその馬車は停止した。
「……よーし、どうどう……旦那! 着きましたよ!」
こちらに会釈しながら、馬車の中に声を掛ける御者のオッサン。
『……む。着いたか』
それに応えて、馬車の中からも声がする。
くぐもっているが、誰の声か分かってしまうくらいに聞き慣れてしまったのが、正直イヤなとこだが。
俺の予想通り、馬車の中から出て来たのは『雑魚メンエルフ』こと、ブラー君だ。
ガシャリと身にまとっている〈鎧〉を鳴らしながら、地面に降り立つ。
「出迎え、ご苦ろ……あ、いや、待たせてしまったようで申し訳ない」
「い、いえ? 大丈夫ですが……」
な、何だ? 前みたいに尊大な態度で出て来たかと思ったら、急に態度と顔色が変わったぞ……あ。
思い当たって後ろを振り返ってみると、ニコニコしながら手を振ってるレティシアさんの様子が目に入った。多分、何かやったんだろうな……いや、深く考えないでおこう。
「と、とにかくワタシは大丈夫ですので」
「感謝する……む? キサ、いや……メルカ、だったか?」
「……はい、メルカですが?」
俺の言葉を聞いて、軽く伏せていた目線を上げたブラー君が、怪訝そうな顔をしているが……何だ?
何故か俺の顔と服装をジロジロ見たり、目線を逸らして何か考えたりしてる。
「いや、昨日会った……のだな?」
「はぁ……会いましたね?」
会ったかって、何だかんだで一日に2回も会ったけどな。
もちろん俺が会いたかった訳じゃないが。
「いや、確かにそうだ……つかぬ事を聞くが、体調を崩している訳では無いな?」
「え、ええ。普段通りですが」
「……ならば気のせいだろう。レティシア殿、確かにメルカを送り届けます」
「ええ、お願いしますね」
何か分からないが納得した様子で、ブラー君はレティシアさんに挨拶している。
レティシアさんも頷きながら返事をしている……が、ブラー君の態度って、明らかに目上の人間に対する態度だよなぁ……気になる。
と、俺が考えている間に話も終わったようで、ブラー君が振り返った。
「では、メルカ。背中の荷物は、私が馬車に積んでやろう」
「え、あ、ありがとうございます」
特に何の気負いもなく、俺の背負っている〈鞄〉に手を伸ばすブラー君。
礼を言って渡せば、少し高い位置にある馬車のステップに足を掛け、〈鞄〉を馬車の乗車部に積んでくれた。
……正直に言って。
初対面の印象が悪過ぎて、何か企んでるんじゃないかと気持ち悪いんだが……俺だけか?
俺がちょっとゾワゾワしながら様子を見ていると、もう一度降りてきたブラー君が、ステップの横に立ってこちらに視線を向けた。
……そのまま、何故か黙ってこちらを見ている。
……え、何これ? どうすれば良いの?
思わず、助けを求めて後ろを振り返ると。
ちょっと困ったような笑顔を浮かべているレティシアさんと、目が合った。
「……メルカさん。彼は馬車のステップが高いから、メルカさんが乗るのを手助けしようとしてくれているんですよ」
「えッ!?」
あの、尊大雑魚メンエルフのブラー君がッ!?
思わず驚愕の表情を浮かべてしまうと、レティシアさんは軽く吹き出しながら言葉を続ける。
「プフッ! そ、そうね……本人から全部言わせた方が良いと思ってたけど……メルカさん」
「はい?」
「昨日のあの子の態度は凄く酷かったようですが、一応『理由』は有ったとの事なんです」
「『理由』……ですか?」
レティシアさんの言葉に、考えてみるが……『理由』が有ったからって、あの態度はどうなんだ?
「納得いかないのは分かりますから、その辺りの弁明も本人から聞いてみて下さい」
小さくクスクスと可愛く笑いながら、言葉を続けたレティシアさん。
しかしまぁ、レティシアさんがそう言うなら……聞くだけ聞いてあげようか。
あまり納得は行かないが、一応聞いてやるかと振り返ると。
「……は、話は終わったようだなッ!」
プルプルと小刻みに震えながら、顔を紅潮させたブラー君が目じりをピクピクさせつつ立っていた。
あー……確かに、今の会話を本人の前でするのは……中々恥ずかしかったのかも?
思わず苦笑いしながら、馬車に近付く。
「で、ではメルカ。手を──「あ、大丈夫です。そこまで高くないので」」
ドアの左に取っ手もあるし。
高いと言ってもステップは広いからな。
急な階段状になっているステップを、取っ手を手で持ちながらトトトンと上がれば、意外と広い室内に出た。
馬車の進行方向から見て左側のドアから入ったのだが、馬車の前方には左右に横並びの座席が。
馬車の後方には前向きの座席が左右に一つずつ、2列になっている……何か、路線バスみたいな並び方だな? 乗れれば何でも良いけど。
まぁ、バスみたいなクッションも何もない木の座席だ、が……あれ、これって……ものすごくケツが痛いヤツでは? 何かクッションになる物は無いのかね?
……ん? あれ? そう言えば……他に誰も居ないな?
もう一度確認するが、さっき渡した俺の〈鞄〉以外何もない。
どう言う事か、ブラー君に聞こうと後ろを振り返ってみたのだが。
「……」
何故か、俺が乗る前と同じ位置で、ジッと自分の手を見ながらニギニギしているブラー君の姿が。
「……何を、してらっしゃるんですか?」
「いや、何でも無い……」
首を横に振ったブラー君が、溜息をついてからこちらに背中を向ける。
「それでは!」
その目線を追えば。
「お気をつけて!」
こちらに目を向けて、笑顔で小さく手を振るレティシアさん。
「早めに帰って来て下さいね!」
大きく手を振りながら、寂しそうな顔をしているチロッペたん。
……そして。
「……」
無言で上着の裾を両手で握りしめながら、ぎこちなく笑顔を見せているレイフェちゃんの姿があった。
俺はとても世話になった3人に、軽く手を振りながら──
「──いってきますね!」
◇◇◇
入口のドアは通常の外開きだったが、車内に何か所かある窓は全て引き戸型のようだった。
また、ガラスも左右のドアと、御者席につながるドア、後部中央のドアの4か所だけで、窓は全開にすれば遮るものは何もない。
今は換気と採光の為か、車内の窓が全て開けられている状態だから暗くはないが、全部を閉め切ると結構暗くなるのかもしれない。
そして俺は今、車内前方の向かい合った座席の右側に座っていて、すぐ後ろの窓からは朝の風が吹き込んでいて清々しいのだが……対面の座席に座っているヤツのせいで、前方の空気がひどく澱んでいる。
「……ぁ」
「……」
「……ぅ」
「……」
目をつむったまま、腕を組んで座っているのだが……見ていると、何かを口に出そうとしては閉じ、声を出そうとしては黙りを繰り返している。
……いや、正直別に見たい訳では無い。と言うか、ハッキリ言えば見たくない。
しかし、レティシアさんにああ言われたら、とりあえず話だけ聞こうと対面で座ったはずなのに、この体たらくである。
このまま黙っていても仕方ないし、俺にもちょっと聞きたい事があるしな……仕方ない。こっちから声を掛けるか。
「……あの、ブラー様?」
「な、なんだッ!?」
「ッ!?」
カッと目を見開いて大声で返事をしてくるブラー君。
……どうでもいいが、狭い空間で大声を出すのは勘弁してくれないか? 耳が痛いんだが?
無意識に両手で耳を押さえた俺を見て、ブラー君が正面で慌てている。
「む! あ、その、すまん! つい、大声を出してしまった……」
「い、いえ……大丈夫です」
大丈夫ではない。
大丈夫ではないが、俺は寛大なので横に置いといてあげよう。
「さっきも気になったんですが、他にも同行者が増える、とお聞きしていた件はどうなったのでしょう?」
耳から手を放しつつブラー君に確認する。
すると、何故かホッとしたような表情のブラー君が俺に返答した。
「あ、ああその事か。同行者の都合で『街門』付近の方が都合が良かった為、出発前の合流にしたのだ」
「なろほど……ありがとうございます」
ふむふむ、そう言う事なら納得だ。
無人の車内を見て、まさか同行者が無しでブラー君と二人っきりとか地獄じゃないですか、と戦々恐々してたからな。
この旅路で癒しになるのは、ミーニー君の『妹』ちゃんくらいのハズだし。
美人さんだったら、いや! きっと間違いなく美人さん…………あれ?
……よくよく考えたら。
同行者が、『ミーニー君たち』とは聞いてないような?
あれ、これって……まさか全然知らない相手の可能性があるんじゃ?
「……ブ、ブラ──」
「ああ、ちょうど見えてきたな。アイツらだ」
慌てて確認しようとした俺の目の前で、のん気に自分の後ろの窓から外を見るブラー君の姿。
「ッ!」
揺れる馬車の中を反対まで移動し、ブラー君の一つ後ろの窓から外を確認すると。
「──あ、ヴァイス卿ですよ先輩ッ!」
「む……おお! こちらですぞ!」
何故か、見覚えのある『オッサン』と『ニイチャン』のコンビ。
加えて。
「ん? おお! ありゃヤベェ美人のエルフの嬢ちゃん……メルカじゃねぇか!」
周りより頭二つデカイ、『ライオン頭』の姿が……見えた。
……同行者って。
……同行者って──アレぇぇぇぇぇッ!?
同行者が男のみとか、それなんて地獄?
ここまで読んで頂き本当にありがとうございます!
もし興味を持って頂けましたら、是非BMや評価、感想で応援頂けましたら、作者も更に気合を入れて頑張らせて頂きますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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希望者には熱いベーゼを……要らない? そうですか……




