あの出来事
「日本に戻り、いろいろ調べました。静江さんも通っていた小学校がどうなったのか。廃校になり、跡形もないと知り、ショックでしたが……。あの単線の駅は残っていて、そこの駅長が、同級生のヒロシの息子さんでした」
ヒロシ!
あの子はもう、ポマードみたいに腕白で大変でした。特に女子にモテていた坊ちゃんを敵視して、よくちょっかいを出していたんですよ。一度私がガツンと叱ったら、おとなしくなりましたけど……。
「彼はわたしが英国から来たと知ると、ヒロシのことを呼んでくれて、そこで静江さんが亡くなったことを知ったんですよ。静江さんは息子さん夫婦の住む都会へ移り住んでいたと聞き、そこでせめて墓前で手を合わせたいと思い、お墓参りに行くことを決めました」
これは不思議な気持ちですよ。私はそう、亡くなっています。それなのに今、こうやって坊ちゃんと話しているのですから……。
「わたしがお墓参りに行くことを、なんとヒロシはわざわざ静江さんの息子さんに連絡してくれたんですよ。そうしたらわたしの滞在するホテルに息子さん……正太郎くんが連絡をくれたんです。とんとん拍子で、会うことが決まり、お墓参りをして、そして正太郎くんの家にお邪魔して、御仏壇で線香をあげました」
「そ、そうなのですね。なんだか現実感がないですよ。そうじゃないですか? 私のお墓と位牌も見たのでしょう? それなのにこうやってここで会話をしているんですよ」
「そうですね。ですがわたしも亡くなっているので、そこまで不思議な気持ちにはなりませんよ。天国で再会……ではなく、乙女ゲームを元にした小説?の世界なんですよね、ここは」
そうなのです。そうなんですよ。つい、乙女ゲームの世界と最近の私は言うようになっていますが、ここは孫が乙女ゲームを元にした二次創作の小説の世界……という複雑なところなんですよ。そう、とても複雑な世界なのに、どうして坊ちゃんが……。
「お仏壇に、きちんと製本された冊子が飾られていたんです。乙女ゲーム『ハッピープリンセスタイム』のミーチェのハピエンルート……そんなタイトルだったと思います。それを手にした時、自分では何が起きたか分かりませんでした。ですが後頭部に突然、感じことのない鈍痛を覚え……。その後のことは分かりません。おそらく脳溢血ですかね。目覚めたら、この世界でした」
「そんな……坊ちゃんは正太郎の家で亡くなったのですか!?」
「ご迷惑をおかけしたと思います。本当に。わたしは静江さんにだけではなく、その息子さんにまで……。情けないことです。静江さんにお詫びしてどうかなることではないですが、ごめんなさい」
そう言って坊ちゃんが頭を下げたところで、出来立てのパンケーキとスコーンが届きました。これは出来立てを食べた方が美味しいですからね。パンケーキとスコーンをいただくことにしました。
「シェリーヌ公爵令嬢は、蜂蜜はかけますか?」
「ええ。甘い物は大好きですから」
「そうですね。昔も本屋の後、喫茶店でよくパフェを召し上がっていましたよね」
スイーツを楽しむ間は、他愛のない思い出話です。
給食のメニューで何が好きだった、とか。
ちなみに脱脂粉乳は声を揃え「まずかった!」と言ってしまい、大爆笑です。
そんなことを話しながら、パンケーキとスコーンを食べ終わると、ふと私は尋ねていました。
「日本の小学校での思い出。確かに坊ちゃんと私は、一緒に過ごしていた時間は多かったと思います。でも学級委員だったみよちゃんともよく一緒にいましたよね? 確かみよちゃんはあのまま地元に残り、お蕎麦屋さんを継いだはずですよ。みよちゃんに会いに行くことは考えなかったのですか?」
わざわざ私のお墓参りをしてくれたことは嬉しいのですが、遥か遠く英国から日本に戻り、私を訪ねてくれることは……少し不思議にも感じていたのです。
「静江さんはもう覚えていないですか? わたしはずっと忘れられませんでした。特に最近、あの出来事がありましたから」
「あの出来事……」























































