プリンセス&プリンス
出ましたよ、案内標識!
『キャンベル国王とダンスを踊りますか?』
「×」ボタンを押そうとすると、「シェリーヌ公爵令嬢」とシャールに声をかけられ、「あ」と思ったらもう遅いではないですか!
なんと「YES」ボタンを押しちゃいましたよ、私……。
「顔色が悪いですか、大丈夫ですか?」
国王陛下の挨拶が始まっているので、シャールは小声で尋ねますが、私はもう変な汗をかいています。こんな国内外の王侯貴族の皆さんが集まっている建国祭の舞踏会で、国王陛下とダンスをするなんて! いろいろな意味で緊張です。しかもそんな恋愛に関するイベントなんて参加するつもりはなかったんですよ。
「だ、大丈夫です」
そう答えながら、シャールからぶどうジュースの入ったグラスを受け取ります。
通常、舞踏会の冒頭で乾杯なんてありません。
ですが今日は建国祭記念舞踏会ですからね。
最初に乾杯があるんですよね。
シャールはその飲み物を私に渡そうとして、名前を呼んだのです。
「……ということで、まずは乾杯したいと思う」
国王陛下の声に、皆がグラスを掲げます。
シャールも私も慌ててグラスを持ち上げました。
「今年も建国祭を無事開催できたこと、皆様の協力とご支援に感謝する。では乾杯」
「乾杯」
乾杯の声が重なり、それは迫力がありました。
皆様、それぞれグラスに口をつけると、すぐに拍手が起きます。
「それでは本日のファーストダンスは……」
ま、まさか、ここで指名されませんよね!?
建国祭記念舞踏会では、未婚で婚約者のいない身分の高い男女が、ファーストダンスに選ばれます。事前の周知なしの完全サプライズで、この栄誉を授かりたいと、婚約者のいない皆様は胸をときめかせているのです。
というのも。
ここで選ばれたお二人は、そのまま婚約されることが多いのです。
なぜって? それはね、国王陛下が「この二人はお似合いだと思う」ということで選ばれている――と皆様考えているようで。選ばれた当事者もそう考えます。その結果、めでたく婚約と相成るわけです。
「来賓からソフィー・エリザベス・ターナー皇女、我が国からシャール・マール・レオンハイム公爵令息でお願いしたい」
拍手が起き、シャールは「えっ」と明らかに動揺しています。
これはもう、息子の晴れ舞台!という気持ちになり、思わずこんなことを口走ってしまいました。
「シャール様、大丈夫です。一世一代の大舞台ですが、ここには母ちゃんもいますから」
「!? シ、シェリーヌ公爵令嬢!? か、母ちゃん……?」
「おい、シャール、皇女様を待たせるわけにはいかない。早く行きなさい」
レオンハイム公爵に声をかけられたシャールは、なんとも悲壮な表情になりました。ですがここでもたもたしては、レオンハイム公爵だけではなく、国王陛下に恥をかかせることになります。
シャールは頭の回転が速い子ですからね。すぐに表情をひきしめ、ホールの中央へと向かいます。そこへ自身の護衛騎士にエスコートされたソフィーが到着しました。
ソフィーはもう、前世プリンスセス映画に登場するお姫様みたいです!
アイスブルーの綺麗な髪はアップにして、ティアラが飾られています。フリルたっぷりのミルキーブルーのドレス、首元のチョーカーには大粒のダイヤモンド。
そのソフィーの手を取るシャールもまた、ブロンドの髪がシャンデリアに輝き、碧眼の瞳もキラキラしています。
まさにプリンセス&プリンス。
素敵じゃないですか!
そこで音楽が始まります。
ゆったりしたワルツのメロディに乗り、二人は完璧なステップとダンスを披露。見ている王侯貴族の皆様から「まあ、なんて美しい」「お似合いの二人ですわ」「まさに愛らしい王子様とお姫様ですね」という囁き声が聞こえてきます。
これにはレオンハイム公爵夫妻も満足気な表情です。
それはそうでしょう。
だってこれでもし、皇女であるソフィーとシャールの婚約が決まったら……。
いろいろな意味でビッグニュースです!
両国の親睦は深まりますし、レオンハイム公爵家にとっても最大の誉れとなります。
そこで音楽が終わり、割れんばかりの拍手が起きました。
もう、広間に拍手の音が反響して、大変です!
二人はこのまま中央からはけ、お話をする時間になります。
この流れもきっと、建国祭記念舞踏会でファーストダンスを踊った二人が結ばれる……これにつながるのでしょうね。
最初のダンスが終わったので、にわかに広間は騒がしくなります。
パートナーのいる皆さんは、続々とフロアの中央に向かい、ダンスタイムです。
私は……シャールがいなくなりましたからね。
両親に「飲み物を取りに行きます」と告げ、「え、もう!? 一曲もダンスしていないじゃないの」と母親に言われながらも、別室に行こうとしたのですが……。
お読みいただき、ありがとうございます!
【お知らせ】
以下作品が完結しました。
一気読み派の読者様、よかったらお楽しみくださいませ。
『溺愛されても許しません!~転生したら宿敵がいた~ 』
https://book1.adouzi.eu.org/n3408ij/
【表紙は平川禅先生の秀麗描き下ろし】
稀代の悪女にされ、断罪寸前の公爵令嬢、かつての宿敵と皮肉な再会!
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