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【461さんバズり録】〜ダンジョンオタクの無能力者、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまうw〜  作者: 三丈夕六


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第251話 魔族の戦い



 〜シィーリア〜


 イシャルナが次元魔法の波を放つ。それを回避しながら彼女へと走り抜ける。螺旋撃を放つとイシャルナは再び亜空間の門へと姿を消した。


「くっ……これで何度目じゃ……!」


 ヤツを追い詰めたと思っても亜空間へ逃げられる。次元魔法は攻守一体の魔法か……鬱陶しい事この上ない。


 周囲に意識を向ける。もうスージニアの狼達はおらぬ。ヤツの狙いは妾1人。どこから仕掛けて来る……?


 その時、背後に僅かに風を切る音を感じた。咄嗟に体勢を低くすると、頭上を斬撃が通り過ぎた。次元魔法の(つるぎ)による斬撃。当たれば即戦闘不能になるじゃろう……。


「だが、当たらねば通常の剣撃と同じじゃ!!」


 地面に手を当て、腕の力で頭上に蹴りを放つ。斬撃を終えたイシャルナの顔面を狙う。


 が、ヤツの右手が妾の蹴りを止めた。


「流石に我と同じ魔王の血族なだけはあるか。しかし、徒手空拳で戦う貴様に勝ち目は無い」


「ぬかせ!!」


 イシャルナに足を掴まれたまま体を回転させる。捻る動きによってヤツの拘束が離れる。そのまま体勢を立て直し、ヤツへ拳を放つ。亜空間の門へ逃げ込もうとするイシャルナ。今までの戦闘で掴んだが、亜空間の門が閉じるにはタイムラグがある。ならば、妾が使える遠距離技を放つのみ。


 亜空間内でも無傷でいられるか? イシャルナ……!!


 両脚で大地を踏み締め、胸の前に右拳でタメを作る。全身のバネを使い、踏み込みながら右拳を放つ。


螺旋龍撃拳(らせんりゅうげきけん)!!」


 技名を告げた瞬間、拳から魔力が放出され螺旋の軌道を描く。螺旋龍撃拳……練り上げた魔力を衝撃波として放つ奥義。妾の使える中でも最大威力の攻撃を亜空間の中へと捩じ込んだ。


 妾の攻撃を飲み込み、門が閉じる。どうじゃ、亜空間の中でも妾の攻撃を避け切れるか?


 周囲を警戒していると、何も無い空中にヒビ(・・)が入る。次の瞬間、空中がガラスのように砕け散り、漆黒の空間が現れる。その中から現れたイシャルナは、地面へと着地した。


「ちっ、鬱陶しい攻撃をしてくれる」


「お主だけには言われたくないのじゃ!!!」


 大地を蹴って一気にイシャルナの懐へと飛び込み、連続で拳を放つ。イシャルナは最小限の動きだけで妾の拳を避け続けた。届きそうで届かぬ。この女……格闘術の心得もあるのか?


「お主はこの世界を巻き込んでまで何を変えるつもりじゃ!! 魔王様の近親として生まれながらこれ以上何を求める!?」


「……我は創生神エリオンを殺す。ヤツが始祖を3種族に分けた事こそ元凶。全ての苦しみの始まりだ」


「な、なんじゃと……!?」


 本気で言っておるのか……? 創生神を殺す? そんなことをすれば妾達の世界もタダでは済まんぞ。大規模な時間修正の波に飲まれて魔王様達もろとも消え去ってしまう。


「気が狂っておる……」


「狂わずに生きてこられた事こそが、貴様が幸福な証だ」


 イシャルナの言葉に面食らった瞬間、目の前にイシャルナが踏み込んできた。


「そして、我は貴様のような女が最も憎い」


 イシャルナが連続で剣撃を放つ。突き、袈裟斬り、薙ぎ払い……そのどれもが速い。一瞬でも気を抜けばやられる。悔しいが隙が生まれるまで回避に専念する他あるまい。


「貴様は何も知らぬ。狭き世界で生き、何が起きているか知ろうともしない……そのような口から出る綺麗事には吐き気がするわ」


「お主は関係の無い者まで巻き込んでおるじゃろ! そんなもの、独りよがりな悪事と何も変わらぬではないか!」


 イシャルナの剣撃に僅かに力がこもり、斬撃の終わりに隙が生まれた。今なら攻撃できる……!


 拳を放つ瞬間、イシャルナと目が合った。それはゾッとするほど暗く、深淵のような瞳をしていた。


「悪で良い。恨みなら全て受け入れよう。それでもなお、やらねばならぬ。ツノが無いというだけで赤子が命を奪われる世界を変えねばならぬのだ」


「何を言っておる……!? この世界を消滅させるつもりでよくも……!」


「その為に九条がいたのだ。過去を改変させ新たな時間軸を生み出す為にな」


 イシャルナがクルリと体を回転させ、後ろ廻し蹴りを放つ。攻撃の直前を狙われ回避が間に合わない。咄嗟に地面を後方へ飛び、蹴りの威力を殺した。


 空中へ吹き飛ばされる体。威力を殺しておらなければ首から上が吹き飛んでいたかもしれぬな……だが、まだじゃ。


 空中で体勢を立て直し、着地と同時に地面を蹴る。イシャルナが再び剣を薙ぎ払う。空間が歪む、斬撃を掻い潜り、その胴体へ螺旋撃を叩き込んだ。イシャルナの口から鮮血が飛び散る。これでヤツの動きにも制限が……。


「甘い」


 瞬間、腹部に強烈な衝撃が走る。下を見るとヤツの拳がめり込んでいた。


「かは……!?」


 ダメだ、止まるな。ここで負ければ何の為にここまで来たか分からぬ。反撃しろ、後の事は考えるな。今はイシャルナを止める事だけに集中するのじゃ。


「はぁ!!!」


 ヤツの腕を引き、バランスを崩した所へ掌底を叩き込む。くの字に体を曲げるイシャルナ。このまま一気に押し切る!!


 浮いたヤツの胴体に拳の連撃を叩き込む。5度目の拳を叩き込んだ後、ヤツの顔面に踵落としを放つ。その勢いにのせ、イシャルナを地面に叩き付けた。


「諦めるのじゃ!! さもなくばこのまま頭を潰す!!」


 足に力を入れるとメキメキと嫌な感覚が足裏に伝う。しかし、イシャルナはそのことを気にもせず妾を睨み付けた。


「……先程から九条の気配が消えている。愚かな事を……もはやこの世界は別の時間軸においても生きる道が途絶えた」


 コヤツ……まだ諦めてはおらぬのか……!?


「貴様を殺せば済む話じゃ……!! 罪を犯してでも妾がジーク達を守って見せる!!」


 イシャルナの瞳に憎しみの色が映る。


「ツノ無しを見捨てた魔族に愛を語る資格は無い」



 イシャルナが言った直後──



 ──妾の頭上に亜空間の門が現れた。



「なんじゃと!?」


 妾の攻撃を受けたのは罠だったのか!?


「死ね、小娘」


 亜空間の門が妾に向かって来る。反応できぬ。このままでは……。


 目の前が真っ黒な空間に塗りつぶされる。油断した。すまぬジーク、ミナセ、ユイ……妾は……。


 諦めそうになった瞬間、何かに体を突き飛ばされた。


「シャアッ!!!」


 それはタルパの呼び出したサメクマだった。サメクマが、妾の代わりに亜空間の門へ飲み込まれる。妾が吹き飛ばされた先には3体のサメクマが待ち構えており、妾を担いで走り出した。


「シャア〜!!」

「シャシャシャ!」

「シャッシャ!!」


 背後を見ると、無数のサメクマがイシャルナへ飛びかかっている。イシャルナはサメクマ達から避難するように亜空間の中へと逃げ込んだ。


 な、なんじゃこれは……?


 困惑しながらサメクマ達に運ばれていると、突然地面に下ろされた。


「はぁ……間に合って良かったです」


 胸に手を当てて息を吐くタルパ。そこにはヨロイ達がいた。




◇◇◇


 〜461さん〜


 助け出したシィーリアにシンとアイルが加わった事を伝える。シィーリアは驚いたようにシンの顔を見た。シンは初めて顔を合わせたシィーリア相手に頭を掻いた。


「あの、僕も戦いますから……」


「……お主がタルパの言っていたシンか。色々気になる事はあるが……今は全て飲み込もう。それで? 何か策はあるのかヨロイ?」


「俺に考えがある。こっからはパーティ戦に入りたい。俺が指揮をとってもいいか?」


 シィーリアは、俺の顔を見つめてふっと笑った。


「救われなければ妾は死んでいたじゃろう……異論は無いのじゃ」


「よし、じゃあシンとシィーリアは俺と動いてくれ。タルパ、言った通りに頼む」


「はい!」


 タルパが目を閉じ魔力を放出する。そして、全ての魔力を放出しながら魔法名を告げた。


夢想魔法(レヴァリエ)


 瞬間、50体を超える熊のぬいぐるみが召喚された。人間サイズのぬいぐるみ達はイシャルナへ向かって行進を始める。タルパが魔力回復薬を飲んだのを確認してから全員の顔を見る。アイル達には既に戦い方は伝えた。シィーリアは俺と組んで動けば問題無いか。


 イシャルナを見る。イシャルナは、広間中を移動しながらぬいぐるみ達を次元魔法で消失させていた。


 心臓が高鳴る。イシャルナ……俺達やモンスターよりもさらに強い魔族……それと戦うと考えただけで手が震えた。


 何かが俺の手を取る。振り返るとアイルが俺の手を握っていた。


「ヨロイさん……うれしいの?」


「……ああ。これをボス戦と考えたらどうもな。悪い、こんな時によ」


 アイルがゆっくり首を振る。彼女は少し微笑んでいた。


「ううん。ヨロイさんらしくて好きよ」


 俺らしい、か。確かに九条と戦った時よりこっちの方がずっと俺らしいよな……。



 ヘルムを両手でガンと叩いて声を上げる。



「……っし。絶対勝つぜ!! みんな!!!」


 全員がコクリと頷く。俺達は、イシャルナへと向かって駆け出した。






 次回、イシャルナ戦です。461さんが考えた対次元魔法の戦い方をご覧下さい。

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