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【461さんバズり録】〜ダンジョンオタクの無能力者、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまうw〜  作者: 三丈夕六


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第228話 受け取る者

 〜九条アラタ〜


 ──ダンジョン周辺地区、浜松町駅周辺ビル。


 夜の屋上から東京パンデモニウムを見つめる。誰も入る者が現れないよう、他のダンジョンよりも一際強固に固められた魔法障壁。それが東京タワーを中心に一帯へと張り巡らされている。その魔力濃度は濃く、東京の中心に大型ドームが現れたような様相だ。


 東京にダンジョンが現れた時、この街はかつての象徴であった東京タワーを失った。俺にとってはそれが、この世界が変わった証のように見えたものだ。


 魔王の姉であるイシャルナから東京パンデモニウム……時の迷宮の話を伝えられてから、俺は定期的にこの魔法障壁を確認に来ていた。


 こんな事は無駄な事だと分かっている。だが東京パンデモニウムに何か動きがあるか確認はしておきたい。


「はっ。結局焦ってるじゃねぇか、俺」


 呟いた瞬間、背後に気配を感じた。


「スーか。何か用か?」


「頼まれていた事、上手くいった。新宿迷宮攻略メンバーの個人情報……情報管理者のヤツ、脅しに負けて送信して来た」


 スーには461や鯱女王の個人情報を手に入れるよう動いて貰っていた。


 探索者の個人情報は管理が特に厳しいが擬態魔法が使えるスーがいるならできない事はない。管理局の長が留守中なら尚更。シィーリアが異世界に帰ったと聞いてすぐにスーを動かして正解だったな。


 シィーリアが帰って来るまでの間、個人情報の管理者に何度も身の危険を感じさせた。一度繋がりを持てば後は自滅を待つだけだ。むしろ、今日までよく耐えたと言った方がいいか。


「そちらのスマホに転送する」


「助かったぜ」


 礼を言うと、なぜがスーが頬を染める。彼女はそれを隠すように俯いてスマホをスワイプした。俺のスマホへファイルデータが転送される。それを開くと、13人の探索者の個人情報と探索者情報が表示された。


 ミナセにジークリード……俺と因縁があるヤツらが13人の中にいるとは皮肉だな。


 考えていると、スーが俺の袖を引いた。


「それともう1つ、イシャルナ様から時の迷宮の詳細を聞いた」


「なんだ?」


「時の力が発動する時、跳びたい時間を象徴する媒介を祭壇に並べると、望む時間に跳べる。その繋がりが深いほど……多ければ多いほどいい」


「そうか」


 媒介……。


 なら、そろそろ回収時かもしれねぇな。紫電の剣……ジークリードの持つ賢人の(つるぎ)を。


 ここに来てジークリードを探索者になるよう仕向けたのが役立つとはな。あのガキなら紫電の剣を絶対に手放さないと踏んで正解だったぜ。



「天王洲アイルは必須だと思う」



 その言葉に思わずスマホを確認していた手を止めてしまう。スーのヤツ、個人情報を見て気付いたか。



 天王洲アイル……桜田カナ。



 媒介とするなら、これほど相応しい存在はいない。だが……カナを巻き込むのは……。



「どうしたの九条様? 九条様の望みを叶えるならやるべき」


「……」


 天王洲アイルの事を知った時は驚いた。カナはあの事件の後、母親の(かえで)と京都へ行ったはずだ。楓はカナを絶対に探索者になどしないと言っていた。なぜこんな……ましてや最前線の東京で探索者をやっているんだ? と。


 スーが俺の顔を見上げる。彼女の顔を見ていると、今まで俺がやって来た数々の所業が突き付けられるようだ。


「九条様が目的を諦めるならこれ以上何も言わない。私は……無理をしなくてもいいと思う」


「慰めはいらん」


「……ごめんなさい」


 スーは悲しげな顔で俯いた。


 何を今さら動揺しているんだ……俺は善人なんかじゃねぇだろ。今まで俺がやって来たこと、して来たこと。全部覚悟の上だったじゃねぇか。今更何を救われようとしてやがる。


 ……。


 元々、故人である賢人を蘇生するつもりでいた。だからイシャルナの誘いに乗った。だが……イシャルナに提示された方法は時の迷宮の起動を利用した「過去の改変」だ。


 それを考えた時、カナはどのような形であれ被害を受けるだろう。カナが探索者になっているのは、賢人の死が理由なのは間違い無いのだから。


 そうであるなら、それは俺の手でやるべきだ。


 どうせ俺は引き返せないほどのことをやって来た。賢人達が幸せになればそれでいい。例え、賢人やカナに恨まれたとしても。


「スージニア。天王洲アイルを監視できるか?」


「できるけど……」


「タイミングを見てヤツらを奇襲する。天王洲アイルと紫電の剣を手に入れたい」


「いいの?」


「俺はなんとしても目的を果たす。その為に生きてきた」


 スージニアは氷のような顔を俺に向けた。


「……了解。イシャルナ様からもうすぐ東京パンデモニウムを開くと言われた。良いタイミングかも」


 ちっ。俺が結論を出すまで黙ってやがったな。


「頼んだぜ」


 スージニアが魔法名を告げると、闇に溶け込むようにその場から消え去った。移動魔法……それを見るたびにスーは人間じゃないんだなと思う。


 天王洲アイルは時の迷宮に連れていく。紫電の剣はどうするか……あのメンバーが揃って攻略する機会でもあればやりやすいんだがな。


 ツェッターアプリを開いて新宿攻略メンバーの近況を確認していく。何か、ヤツらの動向を掴める情報は無いか?


「ん?」


 確認していると、1つの切り抜き動画が目に入った。


 見覚えのある女。シンが接触したタルパマスターという探索者。その女が涙を流しているサムネイル。何をやったんだ、あの女は?



「……」



 無意識のうちにそのサムネイルをタップしていた。夜の屋上に、女の声が響く。



『シン君。私は……君の事が好き、です。君とパーティを組んで、また冒険がしたい。それがどうしても伝えたくて……』



 消そうとしたが、なぜか指が動かない。俺は魅入られたようにその動画を見つめてしまっていた。



『ま、待ってるから……ひぐっ、私、ずっと君のこと待ってるから……だから、お願い。声を聞かせて? また君に会いたいよ……』



「……いくら待っても無駄だ」



 こんな事を言うためにわざわざ配信したのか? 



 馬鹿な女だ。自分を中心に世界が回っているとでも? どう足掻いても変わらないものは変わらない……どれだけ願ってもな。それが分からないからガキは嫌いなんだ。



 俺は明日には行けない。賢人だけを過去に置いて来てしまったから。



 だから……悪いな。



 もう一度だけ動画に目を向ける。涙ながらに訴える少女は、哀れで仕方がなかった。



 よし……俺も準備に入るか。作戦を考えねぇとな。



 夜風を感じながら屋上を歩き、扉を開く。バタンと大きな音がして、外の光は遮断された。



















































 ──タルパちゃん……。







 次回、??の視点でお送りします。九条に自我を飲み込まれてしまった彼は……?


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― 新着の感想 ―
返信ありがとうございます。 ヨロイさんの過去編が読める近未来予告!!!!!(大歓喜) カクヨムさん家のシステムくんと私の携帯が愛称最悪なので(画面が暗闇……)こちらで公開して頂けるのは、クリスマスプ…
 Σ(゜◇゜;)キュピーーン! ……はっ!?アカンイカン!! 静まるのだ!私の『先読み(ランダム発動)』スキル!   ひっひっふぅ~~~ ……よし!封印! これでネタバレの脅威は去った!  (↑…
更新お疲れ様です。 ん~…九条自身も「世界ぶっ壊したら楽しそうじゃん?」的なガチ悪党じゃないから、ちょっとやるせないんですよね。 ともあれタルパちゃんの想いは全く届かなかった訳じゃないみたいだし…こ…
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